「つま先が楽だね。こりゃすごいすごい!」

まずは最小ロット数の200足を仕入れ、今年5月にクラウドファンディングを行う。すると、わずか1日半で目標金額24万円に到達し、最終的に約51万円が集まった。これにより、工場の加工賃を確保できた。

靴下を利用した人の声が続々と届いた。

「靴下のことで人に頼る罪悪感がなくなった(視覚障害者の方より)」
「足の大きさが関係ないから家族で使えるし、片方を探す手間がない」
「この靴下がきっかけで、障害者がどんなところに不便を感じているのかを知りました」

その言葉を一つひとつ読みながら、田村は「誰かの生きづらさが、みんなの価値になったんだ。やってよかった……」と喜びを噛みしめた。

クラウドファンディングを終えた2022年のお盆、田村は開発した靴下を鞄に詰め、愛媛県にある母の家に帰った。ダイニングテーブルで糸始末を施し、「これ、私が作ったんだよ」と祖母に靴下を手渡した。

写真提供=ouca
祖母は靴下を嬉しそうに履いてくれた。

手のひらで感触を確かめる祖母。靴下の裏表を探るも違いが見つけられず、不思議そうな顔をしている。そこで「おばあちゃん、これね、もう裏表を確認せんでいいよ」と説明すると、「なるほど、そういうことか」と言いながら履き始めた。

「つま先が楽だね。こりゃすごいすごい!」

祖母が前向きになってくれた

喜ぶ祖母を見て心が躍った。「改めて、感想を聞かせて」とせがむと、祖母は「私なんかが意見なんて……」と言いつつ、「私にはちょっと長いけど、ひっくり返してもかわいいから、折って履けるね」と新しい履き方を教えてくれた。

「『大切すぎてもったいないから』って、最初はあんまり履いてくれなかったんですけどね。最近は、通っているデイサービスに持って行ってくれているみたい。本当はまめに履いてほしいけど、人前でちゃんとしたいときに履こうとしてくれているのがうれしいです」

祖母は以前まで嫌がっていた補聴器を、率先して着けるようになった。おかげで、家族は声を張り上げなくてもコミュニケーションが取れるようになった。もしかすると、「孫の活躍を自分の耳で聞きたい」という思いがあったのかもしれない。