これは「きっぷ全廃」に向けた第1段階である

磁気券はきっぷ本体に券売機で購入情報を保存している。そして自動改札機できっぷの金額と出発地と到着地の運賃を比較して判定する。

これをQRコードに置き換えると、購入情報をサーバに保存し、これと紐づけたQRコードをきっぷに印刷する。自動改札機の入出場時にセンターサーバと通信して判定を行う。磁気データと異なりQRコードは複製が容易だが、ひとつのQRコードは1回限り有効とすれば問題ない。これらはすべてセンターサーバで処理するからこそ可能になる。

QR乗車券の話題になると、どうしてもICカードの優劣の話になりがちだ。しかしクラウド化されたSuicaシステムにとってICカードとQRコードの役割は同じであり、相互に補完する関係になる。

都市部で日常的に利用する人は処理速度の速いICカード、頻度が少ない人は磁気券と処理速度がほぼ同等のQRコードを「割符」として、クラウド化されたSuicaシステムのもとに処理されるのだ。

QR乗車券はまず、えきねっとと連携したチケットレスサービスから始まるが、自動改札の整備やクラウド化の完了を待って段階的にサービスを拡大していくと思われる。

私鉄各社は足並みを揃えられるか

こうした変化を利用者は受け入れられるのだろうか。自動券売機や自動改札の登場時も同様の議論はあったと思われるが、介する機械・技術は変わっても利用形態が変わらなければ、やがて受け入れられる。

そういう意味では、現在と同様に券売機で(QRコード)乗車券を発券し、自動改札機を通過する形であれば、当初はICタッチ部とQR読み取り部の使い分けで混乱が生じるかもしれないが、高齢者など不慣れな利用者にもいずれ受け入れられるだろう。

この革新は5年以内に訪れるはずだ。かつてのイオカードやSuica導入時もそうだったが、新たなシステムは一事業者が単独で導入しても効果は限定的であり、普及と定着には私鉄各社も足並みを揃える必要がある。JR東日本のQR乗車券が成功するか否かが、今後の鉄道業界を左右することになるだろう。

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