過去の実績には誇りを持ちつつ、プライドを捨てる

とくに中途採用の場合は、いかに素晴らしい実績を持っていても、それが逆に成長を阻む場合があります。たとえば、僕がトリドールでの実績をたずさえてほかの会社に移ったとして、

「トリドールではこうだった」
「トリドールではこれでうまくいった」

と前職に囚われていたら、結局うまくいかないでしょう。会社が変われば、環境も違うし、フェーズも違う。ミッションも違うわけですから、新たな気持ちで仕事に向かわなければなりません。僕はこれを「過去の実績には誇りを持ちつつ、プライドを捨てる」と言っています。

「俺にはこんなにすごい実績があるんだ」と鼻高々な人を採用するのは危険です。変なプライドは学びの邪魔になります。学び続けられる人こそ、会社の成長に必要な人材です。ですから、実績よりも考え方に焦点を当てて質問していくことが大事なのです。

新卒の場合はどうでしょうか。僕がいつも聞くのは次の2つです。

「今までで一番楽しかったことは何ですか?」
「一番の失敗は何ですか?」

「そのときどう思ったのですか?」「それでどうしたのですか?」と深堀りすることで、その人の価値観に触れられると思うからです。新卒のメンバーこそ、会社の文化を作るコアメンバーになります。ミッションにフィットする人かどうかが重要です。

ミッションにフィットする人材を見つける質問は、会社によって違うかもしれません。ただ、少なくとも学歴やインターンシップ、ボランティア、サークルでのマネジメント経験など華々しい経歴で「一般論としていい人材」に目を奪われていてはいい結果になりません。どのような経験を持っているにしても、「なぜ、それをしたのか」「そのときどう思ったのか」こそが大事です。

「意識が高い」とは何か

今は就活の情報も多く「こういう経験(インターン、ボランティア、マネジメントなど)があると就活で有利」と考える人もいるかもしれません。それは、採用する側が「意識が高い人はいろいろな経験をしている」と思い込んでいるフシがあるからでしょう。しかし、意識が高いとは何でしょうか?

就活への意識が高くても、何にもなりません。「人をよく見ない採用担当者が好みそうな経験」を並べているだけだとしたら、「ぜひ我が社に!」とは言わないはずです。

逆に言うと、「大学とバイトしか行っていなかった」という人が「意識が低い」とは言えません。

「大学で好きな研究をしているだけで幸せだと思っていました。でも、研究結果を人に伝えたり、そもそも研究の重要性を伝えたりすることが重要なのだと気づいたんです。それで、コミュニケーションが必要な接客のアルバイトにチャレンジしました」

鳶本真章『ミッションドリブン・マネジメント』(技術評論社)
鳶本真章『ミッションドリブン・マネジメント』(技術評論社)

……そんな話を聞くことができたら、どうでしょうか。その人にとってチャレンジングな経験をしているのであり、そこから学んだことも多いに違いありません。表面上の経験からはわからない、思考や人となりを知るために質問をするのだと心得てください。

返ってきた答えは、社会人からすると幼いと感じるかもしれません。もちろん、それでいいのです。

これからどんどん成長し、活躍していく人材なのですから。中途採用で面接する人と比べてはいけません。

繰り返しになりますが、最も重要なのは、会社のミッションにフィットするかどうかです。中途採用にしても新卒にしても、経験・実績よりも考え方にフォーカスしたほうが、ミッションにフィットする人材を見つけやすくなります。

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