CASE1「働くことの大変さ」を理解しようとしない妻
M郎さん(33歳)は3年前、1歳年下の妻と仕事関係で知り合って半年で授かり婚をした。「もともと妻は専業主婦を希望していたため、出産後は育休明けと同時に退職しました」。現在は、M郎さんの知人が経営している近所のカフェにランチのときだけ子どもを預け、手伝いに行きはじめたとのこと。
M郎さんは、妻が働くことについて異論はなかった。
「オレの収入だけではこの先、子どもの塾の費用や購入したばかりのローンの返済に若干不安があったのも事実。バイトとはいえ、家計を助けるためにも妻に働いてもらえるのはありがたいと思っていました」
ところが、バイトをはじめてから1カ月もたたないうちに、妻の不平不満は募っていき、グチのはけ口はもっぱらM郎さんに向けられることになったのだった。
「妻は、オーナーの人使いの荒さや仕事内容への不満、人間関係のゴタゴタにいたるまで、すべてについて文句を言わなきゃ済まないんです。こっちは疲れて帰ってきているのに、帰宅後は妻のグチのマシンガントークを聞かされ続ける毎日は本当にキツかった。本音では『オレより少ない稼ぎのクセに、いっぱしに働いている気になってるんじゃねーよ』って。でも、それを言うと“モラハラ夫”と騒ぎ立てられた挙げ句、グチもさらに激しくなりそうなので、黙って耐えるしかありませんでした」
そんなM郎さんにとってもっとも腹立たしかったのは、M郎さんが一家の主として働いていることの大変さに理解がなかったことだったという。
「バイトだけであれほど不平不満がたまるなら、正社員として朝から晩まで働くオレの苦労は想像できるはず。にもかかわらず、ちょっと寄り道して帰宅しただけで『いいわねー、外で気分転換できて。私なんて仕事の後はずっと育児に追われて、飲みにもいけないのに』とイヤミまで言い出す始末です」
M郎さんは職場と家庭、両方のストレスはうず高く蓄積されていくのだった。
そんなときに急接近したのが人事異動で同じ部署にM郎さんの部下として配属になった2歳年上の女性だった。
「彼女の仕事に対する向上心やひたむきさに、いつのまにか惹かれていました。ときどき仕事帰りに二人で飲みに行ったりしているうちに、恋愛感情が盛り上がってしまったんです。妻にはない働くことへのポジティブさとキラキラ感に、つい立場を忘れて告白したところ、ラッキーなことに『私も好き』と合意してくれて……」
あっというまに男女の関係になったというわけだ。現在も浮気を継続中というM郎さんにほとんど罪悪感はない。
「しんどい毎日でリラックスできるのは、唯一、彼女と会っているときだけ。頑張っているオレをほめてくれるので、自尊心も回復できるんです」