バランスなんて簡単に取れるものではない

日本では、「ワーク・ライフ・バランス」を提唱する企業や組織が多くありますが、実際のところワークとライフのバランスなんて簡単に取れるものではありません。

とくに日々の生活での時間的なバランス。

ワーキングペアレンツの方々も「時間に追われる」「罪悪感」といった言葉で、その難しさを表現されていました。わたしの経験でも、とくに子育てで忙しかった頃は、ワークとライフのバランスが取れている、なんて感じたことは、ほとんどありませんでした。

ワークとライフ、仕事と子育てを個別に位置づけて「バランス」を取ろうとしても、身体はひとつしかありません。バランスが取れないことは、しょっちゅう起こります。

そのたびに、わたしたちはバランスを取れないことに罪悪感を抱き、自分を責めてしまう。でもそれは、メンタルヘルス面でもマイナスでしかありませんよね。

だったら、いっそバランスを取ろうなんて考えない方がよいと思いませんか。どうせバランスなんて取れないんだと、時には割り切ってしまう方が気が楽になります。

「バランス」の捉え方で人生は大きく変わる

一方で、しなやかに生きるためには、人生全体を見通すという意味でのバランスが、とても重要だとわたしは思っています。物事のバランスを意識するには、単に2つの事柄を取り上げるのではなく、そこにかかわるさまざまな要素に対しての、全体的なバランスを考えることが肝心なのです。

子育てと仕事のバランスを考えるうえでも、目の前にある毎日の時間の使い方だけにフォーカスすると、本来考えるべきバランスを見失ってしまいます。もう少し長い時間軸で、子育てと仕事の取り組み方や力の入れ具合、お金の使い方などを考えることで、違った景色が見えて、精神的にも安定するでしょう。多方面に目を向けるバランスの捉え方は、子育てと仕事においてだけではなく、人生のさまざまな場面で役立ちます。

いくつもの「わたし」を持ち、人生を1年・3年・5年・10年と中・長期的な時間軸と複数のモノサシで捉え、全体のバランスを調整する。その繰り返しが、より豊かで振り返った時に自分で満足できる人生を創る鍵になるのです。