人口減少で結婚式の売り上げは激減

――林社長が経営に関わるようになってからサウナ導入前までの経営状況についても教えてください。

【林】私が就任した2017年は、赤字が3年ほど続いている状況でした。とくに厳しかったのは当時の収益源の中心だった「宴会」と「結婚式」で、地方の人口減少や結婚式を挙げない「ナシ婚」の流れを受けて、宴会と結婚式の件数や規模が縮小していたことが主な理由です。

宴会部門のほうは、単価や経費の見直しをすることで2019年に黒字化したものの、結婚式部門は私たちの努力だけではどうにもできない事情もあり、なかなか厳しい状態が続いていました。

そこで、飲食店とショップなど、他部門の運営も見直しました。飲食店のほうは営業日数や価格の見直しを行ったことで売り上げが約1.5倍に、ショップの売り上げは社長就任前の1.7倍になっています。その後も、ホテルの利益構造を根本から見直すために、さまざまな改革を行っていきました。

森のブランドを活かしてファンを増やす

――単価や経費の見直し以外にも、林社長がされた改革はありますか?

【林】森のブランドを活かしたファンづくりですね。私が就任する2年前に、それまでのシティホテルから「森のスパリゾート」というコンセプトに方向転換をしていたのですが、森をいまいち活かしきれていなかったんです。

敷地内にある森の魅力を伝えるために始めた「朝のリスガイド」
写真提供=森のスパリゾート北海道ホテル
敷地内にある森の魅力を伝えるために始めた「朝のリスガイド」

森に興味を持っていただくためにはどうしたらいいかということを考えたときに、朝食時に、レストランから森のリスがときどき見えることに気づきました。そこで、ゴールデンウィークやお盆などの大型連休の時に「朝のリスガイド」を始めたところ、お客さまに想像以上に喜んでいただけたんです。

ほかにも熊の彫刻を入り口に置くなどして、お客さまが「森」をより感じられるような工夫をしていきました。これがブランディングの第一歩でしたね。

「森はあるけど、スパが弱い」

――まずは「森のスパリゾート」の「森」部分のイメージを強化したわけですね。

【林】「森」を強化したから、次は「スパ」だと。ただ、森はもともとあったものの見せ方を変えるだけでよかったのですが、スパはコンセプトとして打ち出すほど強くはありませんでした。温泉をせっかく持っていても、温泉目当てで来てくれるお客さんがほとんどいなかったんですよ。

「森」のつぎに「スパ」を強化する必要があった、と語る林社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
「森」のつぎに「スパ」を強化する必要があった、と語る林社長

前身のホテルである「北海館」に温泉を引いてから40年経っていて目新しさがないこともありますが、改装するにはお金がかかりすぎる。社長に就任してからずっと考えていた「森のスパリゾートとはなんぞや」という問いの答えはなかなか見いだせないままでした。

そんな悩みを抱えていた2018年夏、友人の紹介でプロサウナーのととのえ親方に出会ったんです。

――のちにホテルの運命を変える出会いですね。