「劣悪な環境でこき使われている」はごく一部
メディアのイメージから、実習生と言えば劣悪な環境でこき使われているというイメージを持つ人が多いが、大半はこうして海外から出稼ぎに来る外国人に感謝し、彼らの労働環境や待遇の改善に努めている。
背景には、若手の労働者確保を実習生に頼らざるを得ない農業の深刻な高齢化がある。
日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2021年)と低く、品目別にみればウクライナ有事で国際的にその値が高騰している小麦などは17%だ。種や肥料も輸入頼りである上、何より生産者がいない。
2021年時点で主に農業に従事する「基幹的農業従事者」の平均年齢は67.9歳。
そのうち、65歳以上が約7割を占める。基幹的農業従事者は約123万人(2022年)いるが、新規就農者は年間約5万4000人(2020年)にすぎない。
若手の労働力は、外国人に頼りっきりだ。
コロナで深刻な人手不足に
2021年8月、筆者は長野県の川上村に足を運んだ。
日本最長河川・信濃川のうち長野県を流れる千曲川の源流地域にある、国内有数の高原野菜の産地だ。
人口約4300人の小さな村で、コロナ前の2019年度には最多1002人の外国人が農業に従事した。コロナ下で出入国に制限がかかり、村は深刻な人手不足に陥った。
2021年9月、標高1185メートルに位置する川上村役場で、由井明彦村長(74歳)を訪ねた。
自らもレタス農家だったという由井は、こう話した。
「朝に収穫したものと、太陽が昇ってから収穫したものでは、みずみずしさも違い、味も変わります。山岳部は寒暖差が大きく、結球しやすいため、川上村の主要作物であるレタスや白菜、キャベツなどの葉物野菜には適しているのです」