「思いやりワクチン」という謎のアジテーション

ワクチン接種を推奨するポスターやチラシなども「誰か」や「大切な人」に類する言葉のオンパレードである。

たとえば、福岡県が作ったポスターの「思いやりワクチン」というコピーは実に象徴的だ。

Covidワクチン後のハグ
写真=iStock.com/PeopleImages
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日本が世界一の陽性者数を2022年7月から10週間連続でたたき出すまで、政府や医療業界は「ワクチンには感染防止効果がある」という設定でとにかく突き進んだ。これが「思いやりワクチン」の根拠になっていたわけだが、その後、陽性者数の増加に歯止めが効かず、ワクチンの有効性に疑問が持たれるようになると、ワクチンを激推しした人々はその事実をシレッとなかったことにし、「重症予防効果がある」「ワクチンが300万人の命を救った」などと言い始めた。

ちなみに、日本は2022年12月中旬、今度は陽性者数7週連続世界一を記録している。「日本は検査数が多いからだ!」なんて指摘が即座に飛んできそうだが、たとえば2022年12月23日、人口846.8万人のニューヨーク(NY)市の検査数は2万9897件で陽性者は2720人(陽性率8.7%)だったのに対し、人口1404万人の東京都における同日の検査人数は2万2022.3件(7日間移動平均)で、陽性者数は9890人(陽性率40.0%)である。

NY市と東京都でデータの取りまとめ方、数字の算出方法などが微妙に異なる可能性があるので、あくまで参考比較ではあるが、少なくとも「NY市は東京よりも数多く検査をおこなっている」「NY市よりも東京のほうが圧倒的に陽性率は高い」ということはできそうだ。

コロナワクチンのPRに横行する「誰かのため」論法

もっとも、具体的な数字をいくら挙げたところで、ワクチン推進派はこれまでまったく聞く耳を持たず、「いいから打て! とにかく打て‼」の大合唱である。一度振り上げたアジテーションの拳は、そう簡単に下ろせないのだろう。ワクチン推奨ポスターを見ると、コピーから必死感すら伝わってくる。

「自分のために。みんなのために。#打ち勝とう #FUKUOKA」(福岡県)
「自分を、患者さんを、そして大切なひとを守りたい。だから#私たちは打ちました」(こびナビ)
「新型コロナ ワクチン接種をぜひご検討ください あなたと、大切な人を守るために」(宮崎県)
「あなたと大切な人を守るため ワクチン接種を考えよう あなたのため わたしのため あしたのため」(長野県)
「正しく知って『新型コロナワクチン』 ワクチン接種は自分だけでなく、誰かの命を守るんだよ。『自分は若いから』、『かかっても軽症だから』と言って油断してはいけないよ!」(岡山県真庭市)
「なぜワクチンを打ったほうがいいの? ・感染したとしても重症化しにくい ・人にうつす可能性を減らす ・ワクチンを接種することで、ワクチンを接種していない人も守る効果がある」(同)

最後の真庭市の呼びかけは、若者に対して完全に「お前ら、自分のことだけ考えているんじゃねー。どこかの誰かを守るためにワクチン打て! その人は誰かにとって大切な人なんだよ」と押し付けたいだけである。