ずっと気になっていたことがあった。本書に何度も出てきた「株主全体の目線」という言葉である。例えば、こんな具合だ。「株主を基軸とする経営とは、個々の株主の目先的な欲得に迎合することではない。『こう考えるはずだ』『こう期待するはずだ』といった株主全体の目線を想定して経営を行えば、他の利害関係者が犠牲になることなしに株主価値を高めることができる」。
別書『株式投資家が会社に知って欲しいこと』(日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム編、商事法務)では、こうだ。「よく企業経営者と会って話をさせて頂くと、時々、『株主の顔が見えないから、誰を向いて経営に関する説明責任を果たすべきなのかわからない』という声を耳にします。…(中略)…顔の見えない株主の平均的な意向は何でしょうか。それがコーポレート・ファイナンス(企業の資金調達・運用)なのです」。
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