今西錦司は日本が生んだ世界的な生物学者である。彼の業績は昆虫学から出発し、生態学、動物社会学をへて極めてオリジナリティーの高い霊長類学を築いた。さらに登山家・探検家としても多くの人々に愛され、多くのプロジェクトを成功に導いた個性あふれるパイオニアだった。本書はこうした今西の波乱に富む生涯について克明に、かつ親しみをもって描いた優れた評伝である。
1902(明治35)年に生まれた今西は、自然と人間が共生する「自然学」を提唱した。自然哲学ともいうべきその精神は、現在でも京都大学を中心とする研究者たちに連綿と受け継がれている。人材育成の達人だった彼の元からは中尾佐助、藤田和夫、伊谷純一郎等の錚々(そうそう)たる学者が輩出した。
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