世界銀行によると、中国の輸出額の対GDP比(サービス部門を含む)は、2006年の36%から21年は20%へと減少している。後者の割合は中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した01年とほぼ同水準だ。また今後5年間は、不動産市場の混乱に起因する内需の慢性的低迷が経済成長の足かせになる。住宅価格の調整は政府による介入のせいであまり進んでいないし、住宅の販売戸数も減少傾向にある。

不動産市場の低迷は鉄鋼や木材、化学製品などの建築資材や、家電・家具・什器などの耐久消費財の需要を抑制し、その影響はさらに広範囲に及ぶ。政府の政策的支援でも不動産価値の下落を防げなければ、住宅価格の下落と連動して総需要も減るだろう。

結果として企業収益は収縮し、経済のあらゆる部門で信用破綻のリスクが高まる。その兆しは既にある。中国の鉄鋼メーカー247社を対象とした調査によると、黒字企業の割合は今年、第1四半期の84%から大幅に減少し、第2四半期には15%だった。

中・大手企業の約32%は5月段階で赤字を計上している。国内最大の鉄鋼生産地である河北省では今年、鉄鋼メーカーの38%が採算割れとなり、1~5月に計65億6000万元(約1300億円)の損失を計上した。昨年同期の損失の5倍以上だ。3期目の習政権では、赤字になった中国企業は従来のような支援を受けられず、そのまま破綻する可能性が高い。

現に2015年以降は、中国でも不採算企業はさっさと破産させ、法的な手続きを経て再建または清算の道を探る例が増えている。また不動産市場の混乱は地方政府と家計の双方を直撃する。前者では債務の拡大が進み、後者では消費が抑制されるからだ。当然、国内の総需要は増えにくくなる。

地方政府は今でも歳入の多くを土地使用権の収入に依存しており、今年8月現在で予算に計上された歳入の9割以上を占めていた。しかし今年は不動産市場の混乱により、8月までの土地使用権譲渡収入による歳入が前年同期比で28.5%減の3兆3700億元(約66兆円)に落ち込んでいる。一方で新型コロナ関連の医療費や高齢化に伴う年金などの歳出は増える一方だ。

デット(債務)

習近平がトップに立った2012年以来、中国政府は需要喚起の経済改革に腐心してきた。しかし習政権が3期目に入っても、供給(投資)に過剰依存する中国経済を需要主導型に転換する取り組みが成功する気配はない。

なぜか。中国の人たちが多額の住宅ローンを抱え、それが消費を抑制しているからだ。中国人は貯蓄に励むという評判が、かつてはあった。しかし今は、貯蓄どころではない。