また10月になって、新たに31の中国半導体関連企業がエンティティー・リストの前段に当たる「未検証リスト」に追加されている。伝えられるところでは、バイデン政権は最先端の人工知能(AI)や量子コンピューティング技術への中国のアクセスを制限するため、さらなる輸出規制の拡大も検討している。
デモグラフィー(人口動態)
需要と債務、デカップリングは3期目に入った習政権にとって喫緊の課題だが、中国経済を長期的に脅かすのは人口動態の変化だ。今はまだいいとしても、この先には「人々が豊かになる前に高齢化が進んでしまう」問題が待ち構えている。
人口動態が中国経済に与える直接的な影響は2つある。まずは労働人口の減少と人的資本の喪失により、人件費が他国に比べて安いという中国の魅力が失われ、長期の成長可能性が損なわれる点。
第2は、社会全体の高齢化の進展により、年金や福祉に関する国の歳出が増えることだ。人口動態の変化自体が必ずしも危機を招くわけではないが、適切な政策を打ち出さなければ成長力は阻害される。これは中国に限ったことではなく、どこの国でも同じだ。
中国では20年に、出生率が過去60年ほどで最低のレベルまで落ちた。生産年齢人口は既に減少しており、人口も数年以内にピークに達する見込みだ。婚姻率の低下と子育て費用の高さも、人口の減少と労働力の不足を招く重大な要因となっている。
中国で第1子を18歳まで育てる費用の全国平均は、1人当たりGDPの全国平均の約7倍に当たる48万5000元(約950万円)。ちなみにアメリカでは1人当たりGDPの4倍程度だ。
北京や上海の子育て費用は全国平均の2倍近くで、農村部の平均に比べると3倍以上。経済的に無理なく子育てできる支援を政府が行わなければ、3人目の出産を解禁した習政権の2期目の政策にも国民はそっぽを向くだろう。
中国は高齢化社会の到来にも対処しなければならない。そのために政府は00年8月に、年金の原資が不足する事態に備えて全国社会保障基金を設立した。
21年段階で3億人が給付を受けていたが、既に資金の不足額は約7000億元(約14兆円)に上るとみられ、今後5~10年で約8兆~10兆元(約157兆~200兆円)まで膨れ上がる可能性がある。国務院は17年、国有企業や国有銀行の株式など、一部の国有資産を基金に移して資本を強化した。