今年9月26日、タレントのモーリー・ロバートソンさんが投稿した「私の受けるインタビューで、頻繁に起こる問題がある」という趣旨のツイートが、大きな注目を集めた。ツイートは42連投に及び、900万以上の閲覧があったという。一体どんな問題なのか。あらためてモーリーさん本人に聞いた――。(前編/全2回、聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)

きっかけはある取材で感じた「決めつけだった」

《このところ縁あって高校卒業までの時期について取材を受けるインタビューが相次いでいます。おそらく日本の多様性が進む中でヒントを見つけようという取材意図があると思います。ここである問題が頻繁に起こります。》

《一つのパターンとして「日本は多様性が遅れている社会で、差別だらけだ。欧米に遅れている。直さなくてはいけない。モーリーさん、どう差別されたのか、どう直せばいいのかを教えて」という組み立てです。このフレームワークには正直言って、辟易しております(後略)》

今年9月26日、ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんの一連のツイートが大きな話題になった。それは自分の経歴への取材が、ある種のフレームワークにとらわれたものばかり、という嘆きから始まった。スレッドに続けられたモーリーさんの連投はなんと42に及んだにもかかわらず、最初のツイートはリツイートが1.1万件、「いいね」が4.6万件も付けられた。

モーリーさんはなぜあのツイートをしたのか、その反響は……。

そこにあるのは、日本社会に根深く存在する意識だった。

――唐突なツイートでした。なにがモーリーさんを動かしたのでしょうか。

その直前に、あるメディアの記者から、自分の経歴に関する取材を受けたからです。その中で自分の中にたまりに溜まったものを吐き出したくなって、ついあのようなツイートになりました。

ただ勘違いしてほしくないのは、私は記者本人や日本のメディアを批判したいわけではないことです。その記者の質問を通じて、私は日本社会全体に長く横たわるある種のアジェンダ、決めつけを感じました。

というのは、その記者の質問は私が30年前に受けた取材と全く同じだったんですよ。

ここでモーリーさんの略歴を紹介する。

1963年、ニューヨーク生まれ。父親は原爆傷害調査委員会(ABCC)の研究員である米国人、母親は新聞記者をしていた日本人。

68年、父親の転勤のため広島県に移住。当初はインターナショナル・スクールに通っていたが、地元の公立小学校に転校。その後、広島の名門私立中高一貫校に合格。

76~77年、転勤のためアメリカに在住。

78~79年、広島に戻り、前の私立高に復学。しかしアメリカと日本の文化の違いから来る行動に、学校側から「風紀を乱す存在」とされる。高校2年夏に自主退学。父母が不仲になり、母親の郷里でもある富山県の公立高校に転校。

80年ニューウェーブ系音楽にはまり、友人たちとバンドを結成。また学校から「不良」認定される。

81年、「不良が東大に受かったら面白いんじゃないか」というノリでハーバード大学と東京大学を受験し、合格。「東大とハーバードに合格した天才」としてもはやされる。レコード会社からも声がかかり、メジャーデビューを果たす。東大は1学期通っただけで退学し、ハーバード大に入学する。