どうすればがんを予防できるのか。消化器外科医の石黒成治さんは「これまで2000人以上の大腸がん手術に携わってきたが、いつも『この人も、おなかの筋肉がペラペラだな』と思っていた。ここ20年で疫学的調査が続々と発表され、『筋肉とがん予防との相関性』がわかってきた」という――。
※本稿は、石黒成治『筋肉ががんを防ぐ。』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
がん患者の多くは腹筋が薄かった
外科医として二十数年間に2000人以上の大腸がん手術に携わってきましたが、その時いつも思っていたことがありました。それは、「この人も、おなかの筋肉がペラペラだな」ということです。性別や年齢にかかわらず、がんで手術をする人の腹筋は筋肉も筋膜も薄く、簡単に切ることができたのです。
これは、外傷などで腹部の手術をするときに開腹する場合とは明らかに違っていました。しかしそのことに意味があると気が付いたのは最近のことです。ここ20年で疫学的調査が続々と発表され、「筋肉とがん予防との相関性」について符合したのです。
がん予防には「筋肉量」が重要
現在、日本人の2人に1人ががんになると試算されています。そして、日本人の死因の第1位はがんです。がんによる死亡数は増加の一途をたどり、30年間で2倍に増加し、年間33万人以上ががんで亡くなっています。
部位別の罹患数では、男性では前立腺がん、女性では乳がんが1位、男女ともに増加しているのは大腸がんです。この3つのがんはもともと日本人がなりやすいがんではなく、主に欧米人で多く認められているがんです。肉の摂取量は50年間で約10倍、脂肪は約3倍になり、野菜や果物を食べなくなってきた食生活が欧米型のがんの増加の主要因だと考えられています。
そしてここ20年の研究結果により、がんは生活習慣の改善により予防できるということがわかってきました。食事、運動、睡眠、ストレス回避といった生活習慣のなかでも「筋肉量」ががんを防ぐ免疫力アップのために重要だということがわかってきました。