世界経済の後退懸念は高まっている。収益を守るため、国内企業の価格転嫁は増え、来年の春ごろまで消費者物価は追加的に上昇しそうだ。そうした展開が予想される中、過度な円安圧力に歯止めをかけることの重要性は増す。具体的な取り組みとしては、長期金利の変動幅上限のさらなる引き上げ、オーバーシュート型コミットメントの修正、マイナス金利からの脱却などが考えられる。そうした取り組みに関する検証や見解を、日銀はより多く公表していくだろう。
金融市場はしばらく波乱が続くか
そうした展開が予想される中、実体経済面では、ウィズコロナの経済運営によって海外からの来訪客が増えている。設備投資の先行指標である機械受注に関しては足踏み感も出ているが、急減する展開は想定しづらい。個人消費が徐々に持ち直すにつれて景気は相応にしっかりした展開が続くだろう。
一方、金融市場にはより大きな影響が出そうだ。長期金利を中心に金利は上昇しやすくなるだろう。それによって国内の株価やドル/円の為替レートの調整圧力も高まりやすい。
特に、海外投資家の多くは異次元緩和が続く展開を予想し、相対的に日本株を強気に見てきた。そうした見方が修正されるにつれて、株価の下押し圧力が強まる恐れは増す。いずれにせよ、わが国の経済が異次元緩和に依存して回復を目指すことは難しくなっている。時間をかけつつ慎重に、日銀は金融政策の正常化を目指すと予想される。