アイヌ、密約、高価なワイン…質問で国を動かしてきた
国会が開いている期間しか出せないので、1日に3本も5本も書いたときがありました。党に所属している議員は、政調のチェックを受けて決裁をもらわなければ、提出できません。しかし一人会派の私は、誰もチェックしてくれません。いい加減なものを出して勉強不足だと笑われないよう、必死に努力するしかありませんでした。
私がこれまでに出した質問主意書を内容別に見ると、36本がアイヌ民族についてです。その中で、アイヌを日本の先住民族だと初めて政府に認めさせたことは、大きな成果だったと自負しています。
外務省が公開した外交文書を基に、沖縄返還の条件として核の再持ち込みを認めるという密約や、本来はアメリカが支払うはずの土地の原状回復費400万ドルを日本側が肩代わりしていた問題についても追求しました。
要人が外国を訪問するとき、現地の大使館がサポートします。その接遇の順位、序列も明らかにさせました。送迎や宿舎手配といった便宜供与の格付けです。皇族や首相、閣僚のAAから、国家公務員・地方公務員のDDまで、7ランクに分かれているのです。
国務大臣経験者が現職の国会議員より格上であることや、各省庁の局部長が国会議員と同格で、同じ官僚への厚遇ぶりが見えたことなど、初めて公表されたので読売新聞で大きな記事になりました。
「負担」なのは不都合なことを隠そうとするから
外務省でいえば、購入しているワインの金額についても質問しました。狸穴のロシア大使館の向かいにある事務次官公邸が何に使われているか、普通の国会議員は知りません。ここは外務省の隠れ家で、外国から要人が来たときに高いワインを飲ませて接待するのです。こんなムダ遣いをさせてはいけないと思って質問したところ、答弁書には、
〈平成12年から平成16年までに外務本省において購入したワインは合計で2177本であり、その総額は1644万3038円である。〉とありました。
あるいは、国民の税金である予算から、外務省が官房機密費を20億円も上納していた問題。これが廃止されたのも、私が質問主意書を出したことがきっかけです。
質問主意書が官僚の仕事の負担になっているとか、細かい質問を繰り返すのは乱発だという批判があるのは知っています。
ですが、この点について、佐藤優さんは一刀両断してくれました。
「正直に書けば2、3分で済みます。過去の不都合を突かれたくなかったり、つじつまを合わせたりする必要があるから、書くのに時間がかかるんです。役人が負担だと言うのは、ごまかそうとするからですよ」
これが、外務官僚として経験豊富な佐藤さんの見立てでした。