社内の人間は「上級国民様」の言いなりに

これに関しては、鴇田氏は非常にわかりやすい。東大法学部卒の通産官僚で、中小企業庁長官まで務めた。その後、石油公団の理事から2002年にTOKAIの「顧問」となり、そこから取締役となるという、「天下り」の見本のようなキャリアを歩んでいる。

TOKAIグループでは主に、ガス・電気というエネルギー事業や情報通信サービスを提供している。そんな経産省が所管する企業の人々が、新しく経営者の席に座った「上級国民様」に対して何かモノを言えることができるだろうか。

できるわけがない。鴇田氏が社長に就任した09年当時は、経産省幹部には鴇田氏の後輩や部下がゴロゴロいた。もし鴇田新社長の機嫌を損ねてしまうような「粗相」があれば、TOKAIグループ全体に不利益があるのではないかと考えた役職者も多くいたはずだ。

ちなみに、この「権威」というのは、「監督官庁からの天下り」に限った話ではない。例えば、ゴーン氏の「権威」というのは、「ルノーが経営再建のために送り込んだ」というものなので、やはりこちらも社内の人間は逆らえない。

土下座イラスト
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エリートに「気後れ」してしまう高卒社員

また、中小企業の場合は「高学歴エリート」もこれに該当をする。以前相談を受けたある中小企業では、創業者一族の3代目社長が「視察」と称して海外旅行三昧で、カジノまでのめりこむことが問題になっていた。

この社長を増長させたのが、社内で誰もその振る舞いを注意しなかったからだ。もちろん、それは創業者一族ということもあるが、そこに加えてこの社長、海外の某有名大学を卒業後、誰もが認める世界的大企業に入社したという「エリート」だったことが大きい。

一度、この企業の経営幹部やプロパー社員たちに「いくら創業者一族とはいえ、あまりに目にあまる使い込みは注意すべきでは?」と提案したところ、「こちらのことをバカだと見下して話を聞いてくれないので、もう諦めた」というような返答が返ってきた。また、経営幹部やプロパー社員たちの中には高校卒業後、ここに就職をしたという人もいるので、エリート風を吹かせる社長に「気後れ」してしまうというのだ。

このように誰も諌める者がいなくて、「使い込み」に走る経営者をさらにエスカレートさせてしまうのが、3の《経営の舵取りをしてから「結果」を出している》である。