マツダが今年9月に発売した新型SUV「CX-60」が好調だ。自動車評論家の小沢コージさんは「世界の自動車メーカーが電気自動車にシフトする中、あえて個性的なディーゼル車を作る逆張り戦略がついに始まってしまった」という――。
MAZDA CX-60
写真=筆者提供
MAZDA CX-60

新ラージ商品群第1弾「CX-60」は初速好調

いよいよ始まってしまいましたね。日本が生んだ俺流自動車メーカー、マツダによる一世一代の賭けが!

まずは9月15日、予定通り新ラージ商品群第1弾たるミディアムSUV、新型CX-60が国内発売されました。3月の技術フォーラムに始まり、6月のプロトタイプ撮影会、9月の公道試乗会とすべてを追ってきた小沢としても感慨深いものがあります。

当初は4種類あるパワートレインのうち、国内ではメインユニットたる3.3リッター直6ディーゼルマイルドハイブリッドのみ、欧州では半電動のプラグインハイブリッド(PHEV)のみの発売。

販売データを見ると9月時点の国内受注は8726台で、10月末時点はなんと1万4000台! 同時期の欧州受注も1万9000台となんとも素晴らしい結果に。

発売2カ月前の6月時点での国内受注は約6400台。同時期の日産エクストレイルに比べてほぼ半分であり、「少なめ」という声も出ましたが、コロナの影響とマツダの企業規模を考えると上出来と言っていいと考えます。

そもそも過去の最高年間販売台数は161万台(2018年)のマツダ。スタートプライスこそ安いものの、マイルドハイブリッドが500万円を越えるプレミアムSUVにもかかわらず初期受注1万台突破は素晴らし過ぎます。想定外にブラボー! なスタートダッシュでしょう。

「一世一代の賭け」と評する明確な理由

なにより今回小沢が一世一代の賭けと言うのには明確な理由があります。

ご存じここ10年の自動車界はCASE「Connected=コネクテッド、Autonomous=自動運転、Sharing=シェアリング、Electrification=電動化)革命真っただ中で特に電動化は進化が速い。

例えば意欲的な欧州プレミアムは「市場の環境が整えば」などの前置きはあるもののメルセデス・ベンツが2030年の完全EV化を宣言し、アウディやボルボも同様の計画を立てています。あとわずか7年後です。

日本でもレクサスが2035年、ホンダが2040年の100%電動化を宣言しましたし、なにより欧州委員会は2035年までの全新車のゼロエミッション化を決定。

今後改革案が緩められる可能性も無くはないですが政府レベルの判断はとんでもなく重い。

そんな中、今から新作6気筒エンジンを作り、ハンドリングや重量配分こそ向上しますが、エンジンがスペースを食うある意味非効率なFRレイアウト車を完全新規開発するなんて普通に考えるとナンセンス。時代に逆行しています。

皆がサッカーで騒いでいる時代に、日本古来の蹴鞠けまりに熱中し、ラーメン全盛時代に前衛的日本ソバ屋に賭けるようなもので、これぞ21世紀自動車界のドン・キホーテかつ逆張りなサムライメーカーと言えるでしょう。