「エレベーターが遅い」は問題の本質じゃない

その解決策は、「各階のエレベーターの前に大きな鏡をつける」でした。

エレベーターの前に鏡を設置してみると、待っている人は身だしなみや髪を整えたり、お化粧のチェックをしたりして、待ち時間が気にならなくなったそうです。その結果、クレームもなくなりました。

このエピソードのポイントは、オーナーにとって「問題の本質は何か」なんです。

問題の本質は「エレベーターが遅い」ことではありません。「クレームをなくす」ことだったのです。だから、クレームさえなくなれば問題は解決するので、別にエレベーターが遅いままでもかまわないわけです。

実際、エレベーターの待ち時間はまったく同じなのに、鏡を設置したら誰も困らなくなったわけですからね。

もし、「エレベーターが遅い」ことが問題の本質だと思い込んでいたら、エレベーターを速くするために最新の制御システムに取り換えたり台数を増やしたりして、お金も時間もかかります。でも、そのわりに数十秒速くなっただけなら、体感的にはあまり待ち時間が変わらず、もしかしたらクレームは続いていたかもしれません。

その意味でも、問題点を見極めて、最小限のコストで利用者の不満を解消したこのエピソードは、見事ですよね。

それだけ問題点を見極めることが重要だ、という話です。

よくある模範解答では不満が残る?

もう一つ、今度は思考クイズを出したいと思います。

ここにリンゴが10個あります。これを3人で公平に分けたいのですが、あなたならどう分けますか?

このクイズは、水平思考クイズとしてよく取り上げられる問題です。

水平思考というのは、筋道を立てて論理的に結論を出すロジカル・シンキングに対して、ラテラル・シンキングとも呼ばれます。既成概念や論理の制約となる前提にとらわれることなく、物事を多面的に考察し、水平方向に発想を広げる思考法です。

このクイズの場合、ロジカル・シンキングとラテラル・シンキングでは考え方が違うので、答えも異なります。

ロジカル・シンキングなら「3個ずつ分けて、残った1個を3等分する」「重さを量って3等分する」が答えになります。一方、ラテラル・シンキングだと「10個をミキサーにかけて、ジュースにして3等分する」という答えをよく見かけます。

「ジュースにする」方法は、一見「なるほど」と思うのですが、僕はこの答えはあまりスッキリしません。

そもそもジュースではなく、リンゴを食べたかった人がいたら不満が残ると思うんです。

「3個ずつ分けて、残った1個を3等分する」も平等そうに見えるのですが、1個を3等分するときに、ぴったり同じ大きさには切れないと思うので、これも不平が出るかもしれません。