万引き犯のなかには家族で犯行を行うケースもある。施設警備会社として万引き対策を行っているNICCOの日南休実会長は「万引きは単独で行うより、複数で役割分担したほうが成功率があがるため、計画的に家族で犯行に及ぶ場合がある。親密な関係性で万引きを犯すと結束感がたかまり、成功体験をつむことで深みにハマってしまうのではないか」という――。(第2回)

※本稿は、日南休実『万引きGメンの憂鬱』(ザメディアジョン)の一部を再編集したものです。

孤独ティーンエイジガールズ
写真=iStock.com/xijian
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実際に存在した「万引き家族」

では、実際に万引きGメンが遭遇した事件を紹介しながら、現在の万引きをめぐる状況について説明していければと思います。(本稿では容疑者のプライバシーを考慮して、使用するエピソードは何人かのGメンから聞いた事例を組み合わせたり、細かい事実を変更するなどしています)。

まず最初にお話ししたいのは“万引き家族”に関する事件です。

日本では2018年、その名もズバリ『万引き家族』という映画のヒットによってこの名は一般層にまで広がりました。カンヌ国際映画祭で最高賞を獲得した本作を監督したのは名匠・是枝裕和氏。映画は監督の創作によるものですが、是枝監督がドキュメンタリー畑の出身であることを考えると、こうした事件が現実にあることをもともと知っていたのかもしれません。

映画のヒットによって一気に流行語となった“万引き家族”ですが、実際にそういう家族は存在します。家族ぐるみで万引きを計画し、それを実行するのです。

たとえばこんな例がありました。