受験をきっかけに夫婦仲が悪くなってしまうことも
Cの「親に言われて仕方なく」とか、「やらないと叱られるから」勉強している場合も本来のやる気ではありません。心理学では、「叱られるからやる」形を外発的動機といいます。自分の外側に理由があるので、途中でちょっと大変なことが起きると、途端に自信をなくしたり、おもしろくなくなってやめてしまったりします。
反対に最もやる気が出るのは、「勉強が好きだから。楽しいから。やりたいと思っているから」。これを内発的動機といいます。つまり、自分で中学受験をしたいと思っている。それが最強の理由になります。
ただ、たいていの場合、12歳以下の子供にそうした大人のようなモチベーションはありません。よって、中学受験をする理由は親が用意するのは仕方ないのですが、始まりはそれであっても、できるだけ子供にも受験を“自分ごと”にしてほしい。だから、うまくいってないと思う時には、受験する意味や目標を、もう一度、親子間でよく話し合うといいです。
「なんのために中学受験を選ぶのか。やってみて、今の状況はどうなのか?」。事実を洗い出してみると、きっと気づきや発見があるはずです。
その次にしてほしいのが、ゴール設定です。何事もどこに向かっているのか分からないままでは、そのために何をするかも定まりません。これは夫婦間での確認作業も必須です。
子供のサポートをする夫婦間で認識のずれがあることに気づくこともあるのです。
例えば、父はできるだけ偏差値の高い学校に行かないと受験をする意味はないと思っていて、そのためには多少の無理も必要だと考えている。結果的に、志望校を実力より高く設定して、そこに向けて頑張らせようとしているけれど、なかなか成績は届かず、子供が疲弊している。
そんな様子を見て母親は、偏差値より入ってから子供が伸びる環境を重視し、無理を強いない受験をさせたいと思っている。どちらも子供の幸せを願っているのですが、方向が違うので、それが原因で夫婦喧嘩に発展していたのです。
極端な場合、価値観の違いが露呈して、子の中学受験をきっかけに夫婦仲が悪くなって、のちに離婚に至るケースさえあります。これでは、子供があまりにかわいそうです。
もし、そんな価値観の違いが明らかになったら、お互いに相手の気持ちは尊重しつつ、そもそもこの中学受験はなんのためにするのかを今一度、夫婦で話し合ってみることです。
結局、親子関係(夫婦関係も)をよくすることが、遠回りのようでわが子の受験を成功に導く近道になるのです。
子供に対しては、もし、何かうまくいってない時には、現状をよく観察してどこに問題があるか事実を確認すること。その上で、うまくいっているところに注目して自信を持たせ、スモールステップで成功体験を重ねていくのがコツです。
そして最後に伝えたいのは、ダメな学校はないということです。第一志望校に受からないケースもあります。しかし、子供がそこまで蓄積した力を出し切ることが大事です。その結果、ご縁のあった学校が子供にとってベスト。親ができるのは、どんな学校に行っても、その学校やわが子の良いところを見つけていく、そういう姿勢がより良い結果を引き寄せていくはずです。良い親子関係を築くことは、遠回りのようで、幸せな中学受験への近道なのです。