歯止めがかからない日本の少子化。大学・短大の半数近くが定員割れで生き残りに必死だ。その戦略のひとつが「中高一貫校」を傘下に置き、付属校・系列校化すること。中学受験塾経営者の矢野耕平さんは「すでに中央大、青学大などが実施し、明治大も吉田茂元首相などを輩出した日本学園中高を2026年に系列校化すると発表し、偏差値や志望者数が爆上がりしています」という――。

※本稿は、矢野耕平『令和の中学受験2 志望校選びの参考書』(講談社+α新書)の一部を再編集したものです。

勉強する小学生男児
写真=iStock.com/Milatas
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生き残りを懸ける大学

「日本は衰退途上国である」と言われて気持ちの良い人はいないでしょう。でも、この見方に真っ向から反論するのは難しいことです。戦後約40年にわたって続いた経済発展は平成時代に入った頃から停滞し、いまだに回復の兆しは見えません。

経済協力開発機構(OECD)が2021年に公開した前年2020年度のOECD加盟国の平均賃金データに目を向けると、日本は25カ国中22位であり、先進7カ国中で6位というなかなか厳しい現実が突き付けられています。

ほかにも、円安の進行、工業製品の輸出力の低下……日本の課題は山積みですが、その中でも深刻なのは「少子高齢化」ならびに「人口減」でしょう。

日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに、これ以降は人口減少社会に突入しています。また、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した人口の将来推計(中位シナリオ)では、2021年の時点での出生率は1.40で出生数は86万9000人とされていましたが、この想定を上回るスピードで少子化が進行しています。

子どもたちが大人になるときには、どんな日本になっているのでしょうか。高齢者を多く抱える日本社会で、いまの子どもたちはわれわれの世代とは比較にならないくらいの重荷を負うのかもしれません。

各種教育機関はこの少子化の進行に戦々恐々としています。とりわけ大学はすでに18歳人口減少の影響を受けていて、日本私立学校振興・共済事業団が2022年9月に公表した「私立大学・短期大学等入学志願動向」のデータによると、集計した598校のうち、定員割れの私立大学・短期大学は284校であり、その率は47.5%と実に半数近くを占めています。今後、さらにこの割合は高くなると予想されています。

そのため、いろいろな策を講じて大学は生き残りを懸けています。

その一つが「中高一貫校」を傘下に置き、付属校化することです。これを実現することで、大学サイドとしては安定的に学生を確保したいと望んでいるのでしょう。