落ち着きを取り戻した付属校人気

近年の中学入試における大学付属校人気は凄まじいものがありました。

「大学入試改革」「大学入試定員厳格化による首都圏私立大学の難化」への不安が主たる理由と考えられます。

ただ、わたしは前作『令和の中学受験 保護者のための参考書』でこんな警鐘を鳴らしました。

〈付属校人気には注意が必要です。

わたしが偏差値に対して、物価や株価に用いる「高騰」などという表現を用いたのには理由があります。偏差値は外的環境によって、いともたやすく変動するものだからです。

いまの小学生たちが大学入試を迎える頃は大学入試改革から何年も経過していて、入試制度も落ち着きを取り戻している可能性が高いのです。

言い方を変えれば、有名大学付属校の中学入試で合格できる力量があるならば、わざわざその系列大学に進学するのは(学力面で)「もったいない」と感じるような時代がやってきてもおかしくないのです。〉

そして、この「読み」は思ったよりも早くに当たりました。その原因は「コロナ禍」です。2022年度の中学入試状況を分析すると、その人気にブレーキがかかった大学付属校が目立ちました。

昨春(2021年)の大学入試では、首都圏の私立大学各校の受験者が大きく減少し、全体的に易化いかする傾向が見られたのです。少子化による高校卒業生数が約2.6%減少していることも一因として挙げられるでしょうが、コロナ禍による以下の2つの原因が大きいと見られています。

①従来であれば地方から首都圏大学を受験する層が激減した。緊急事態宣言の発出されている首都圏まで足を運ぶのをためらった結果と考えられる。

②それに関連して、この先も対面授業が果たして成立するか否かが見えない首都圏の私立大学を避ける傾向にあった。

このような大学入試動向を踏まえると、中学受験の段階で何も進学する大学を決めなくても良いのではないかという小学生保護者が多くなるのは想像に難くありません。