悪質な無断転載やネタバレは刑事責任も追及される

マンガを買わなくても、あらすじだけわかればいい……そう考える人が残念ながら多いのでしょう。セリフをまるまる書き写し、あらすじを書き添えるいわゆる「ネタバレサイト」が後を絶ちません。

2021年、マンガ『ケンガンオメガ』(小学館)の作者と出版元である小学館が、ほぼすべてのセリフをネタバレサイトに掲載されたことを受け、発信者情報開示請求を行いました。裁判所は、セリフの掲載が複製権、公衆送信権の侵害にあたるとして、発信者情報の開示を命じる判決を出しており、ネタバレサイトの運営者は、その後、刑事責任も追及されています(東京地判令和3年3月26日裁判所ウェブサイト掲載判例)。

またマンガ以外にも、書籍の内容を図にまとめて要約する「図解化コンテンツ」や、映画を無断で10分ほどにまとめて結末を明かす「ファスト映画」も近年急増しており、逮捕、起訴され、有罪判決まで受ける投稿者が出ています。

フードをかぶり、暗い部屋でインターネットを使用する人
写真=iStock.com/Milan_Jovic
※写真はイメージです

テレビの番組をライブ配信したり、画面内で装飾だけして番組をアップロードする動画も後を絶ちませんが、これらも複製権、公衆送信権等の侵害にあたります。

なお、セリフの書き起こしは行わない、文章によるネタバレの場合には、具体的にどのような表現をしているかによって、著作権侵害にあたるかが左右されます。ざっくりとしたあらすじ紹介や要約などの場合は、著作権侵害にはならない一方で、詳細にストーリー展開を説明しているような場合には、翻案権の侵害にあたると考えられます。

無断転載に対抗するには専門的な知見が必要

【Q4】小説投稿サイトに作品を投稿しています。挿絵として、SNSで見つけた「フリー素材」「ご自由にお使いください」と書かれている画像を使っています。しかし後日、その画像の作者を名乗る人から、「無断転載です。取り下げてください」と連絡がありました。どうやら第三者が無断でフリー素材として配布していたようです。画像を無断転載してしまったことで、私はなにか法的なペナルティを受けるのでしょうか?

【A4】「フリー素材」「ご自由にお使いください」という虚偽の説明を信じたことに過失がないのであれば、著作権(複製権、公衆送信権)侵害について過失がないと言え、損害賠償責任を負うことはありません。他方で、著作権の侵害行為に対する差止請求は故意・過失を要件としていませんから、虚偽の説明を信じていたのだとしても、著作権者による差止請求は認められます。著作権者から取り下げを求められたら、大人しく応じましょう。

【Q5】海外の海賊版サイトに無断転載されました。英語もわかりませんし、泣き寝入りするしかないでしょうか?

【A5】必ずしも泣き寝入りをする必要はありませんが、対抗手段をとるには、専門的な知見に頼らざるをえません。

「漫画村」も、ウクライナの企業が提供するサーバーを利用して運営されているサイトであったため、日本国内のサイト運営者や投稿者を特定するような、通常の方法での運営者特定は困難でした。しかし、「漫画村」に自身の作品を無断で掲載されていたマンガ家の代理人弁護士が、アメリカの民事訴訟手続を利用して、「漫画村」運営者の特定にこぎつけました。

そもそも特定が可能なのかも含めて、どのような手法で特定できるかはケース・バイ・ケースですが、海外のサーバーを経由している場合、一筋縄ではいかないのは間違いありません。