性格は変えられるのか
性格が遺伝で決まる割合は、5~7割と言われています(専門的には「性格」「人格」「気質」などは細かく分類されますが、ここでは一般的な意味での「性格」で統一して考えていきます)。
「そんなに!」と思う人もいるかもしれませんが、見方によっては「3~5割は変わる余白がある」とも言えます。時と場合によって人の性格は変わるとする「モード性格論」は、「性格は変えられる」とする議論の1つの裏付けといえるでしょう。
髪型が変わると性格も変わる
「ちょっとしたことで人の性格など変わる」という説なら他にもあります。スタンフォード大学のベルミとニールの研究では、見た目に自信を持つと行動が変わることが実証されています(*7)。好きな髪型に変えるだけでも性格は変わるのです。
例えば、金髪にすると大胆になり、モヒカンやリーゼントにすれば尖った性格に。
その髪型をしている人がしそうな行動をとれるようになるということです。
顔のパーツや背格好は無理でも、髪型なら簡単に変えられます。その髪型で性格が左右されるなら、「性格は変わらない」なんて諦める必要はどこにもないはずです。
成功体験の積み重ねで「あがり症」も克服できる
あるいは、1つ「うまくいった」という体験が他のところにも伝播していき、できなかったことができるようになるというパターンがあります。
これは、ハーバード大学の行動分析学者バラス・スキナーが提唱する「スモール・ステップス」という学習理論を認知行動療法に応用したもので、実行可能な小さなプロセスをこなし成功体験を重ねることで、より大きな困難に立ち向かう方法です(*8)。
これはいろんな場面にあてはまると思います。例えば、あがり症のせいで人前で発表するのが苦手という人も、まず数人の前で練習をして、「話せた」という成功体験を積むと、大勢の前でも話せるようになる。そんなケースです。
「うまくいった」という体験をすると、脳にある「報酬系」という神経のグループが刺激され、やる気が出たり幸福感を覚えたりします。それをまた味わいたくて、また別の場面でも、あがり症を克服しようというモチベーションが働くのです。
あがり症など、自分が治したい性格があるなら、あがらないでいられる場所を1つでも見つけることが突破口になるということです。
(*7)Belmi, P., & Neale, M. (2014) . Mirror, mirror on the wall, who’s the fairest of them all? Thinking that one is attractive increases the tendency to support inequality. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 124 (2) , 133–149.
(*8)Skinner, B. F. (1954) . The science of learning and the art of teaching. Harvard Educational Review, 24, 86.