「全力」と「いつも通り」、どちらが成果を上げられるか
「いつでも全力!」か「いつも通り、リラックス」か。
どちらが、人のポテンシャルを引き出してくれる態度なのでしょうか。
元劇団四季の主演俳優で、今は人材トレーナーをしている佐藤政樹さんが、こんなことを言っていました。
「本番だけ120%の力を出そうとしても、できるはずがない」
「練習は本番のように、本番を練習のように臨むべき。張り切って『並』なんだ」
恐ろしいほど多い数の公演を、最高のクオリティを維持しながら続けている劇団四季では、厳しい修練に基づいた高い平均値の演技を、力みすぎることなく「いつも通り」にこなしていくことが必要とされているのでしょう。
アスリートがルーティンを重んじるのも、「いつも通り」を重視しているからです。
元メジャーリーガーのイチローさんも、現役中は寝る時間、起きる時間、食事の時間はもちろん、ベンチを出てから打席でバットを構えるまでの動きなどに至るまで、常に同じでした。
ベストは「最大限マイナス数%」
筑波大学の村木と立命館大学の稲岡による研究では、努力度50%から全力(100%)まで10%ずつ変化させていって、垂直跳び、ドロップジャンプ、握力のパフォーマンスがどう変わるかを調べました(*6)。
基本的に努力度が高いほどパフォーマンスが高くなる傾向はあったものの、90%で過半数にパフォーマンスのピークが見られたことから、「ベストなパフォーマンスは最大限マイナス数%で達成される」という仮説を立てました。
確かに、全力でやるより少し余裕があるくらいの方が心の落ち着きも出てきて、プレッシャーなどにも対処できそうです。
(*6)村木征人・稲岡純史 (1996) 跳躍運動における主観的 強度( 努力度合) と客観的出力との対応関係. スポーツ方法学研究, 9 (1) , 73-79.