逆に、パソコンでレポートを書くことだけ、あるいは1つのSNSだけをずっと続けているぶんには、あまり大きな問題は起こりません。これはスイッチングがないからです。

スマホやタブレットが普及し、スイッチングは時と場所を選ばず、ますます起こりやすい状態になってきました。スマホの長時間使用による学力低下の大きな原因の1つは、スイッチングだ、と私は考えています。

スマホ学習をするなら、何もしないほうがまし

スマホを使う子どもたちを見ていると、ゲームをしていると思えばユーチューブ(YouTube)に目を凝らし、かと思えばウェブサイトをハシゴして気になる話題をチェックし、そんな合間にLINEを使うというように、アプリを次々と切り替えることが当たり前になっています。

自宅で電子機器を使用する父と娘
写真=iStock.com/FG Trade
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そもそもスマホは、非常にスイッチングしやすく作られていますから、こんな使い方が加速する一方です。こういう使い方をしている間は、注意力が散漫になって、「脳が何にも集中できない状態」が続いてしまいます。

スマホを「勉強そのもの」に使う──宿題をするときや作文を書くとき、資料を漁ったり難しい言葉を調べたり、地図で場所を確認したりするなら、問題はないだろう、と思う人がいるかもしれません。これは大きな間違いです。

スマホを使ってネットにアクセスする学習で大きな問題になるのが、「スイッチングの起こりやすさ」です。学習アプリを使っている最中にLINEメッセージが届けば、かなり強い意思を持つ子どもでないかぎり、LINEを開いてメッセージをやりとりするでしょう。

ユーチューブ映像のオンライン授業を受けていて、わからないところをウィキペディア(Wikipedia)で調べ、知らない地名が出てきたら地図を開いて確認するという勉強は、次から次へとスイッチングを繰り返しています。

こういう学習は効果が薄いだけでなく、脳に損傷を与えてしまう恐れすらあります。スマホを使って学習するくらいなら何もしないほうがましだ、と言いたいほどです。

スマホやタブレットなどを活用する学習方法を導入するならば、端末を学習専用として、SNSなどのアプリを入れないといった工夫が絶対に必要でしょう。

作業している人の後ろでLINE通知音を鳴らすとどうなるか、という心理実験で確かめましたが、音が鳴ったとたん注意力が低下し、作業効率も落ちてしまうのです。ところが、同じ音でもタイマー音を鳴らすと、そうはなりません。

ただ音が鳴ってうるさいことが問題なのではなく、「SNSなどでメッセージを受け取った」と知らせる情報が、集中力を著しく低下させてしまうのです。

学習で何らかの知識やスキルを身につけたいなら、勉強中にスマホの通知音とバイブレーションをオフにしたり、電源を切ったりすることは「基本中の基本」なのです。