記事はこのような警察署は中国共産党が運営しているものであり、少なくとも世界30カ国に54カ所の存在が確認されていると報じている。多くは偽装されており、中華料理店やコンビニのスペースを一部利用して運用されているという。

セーフガード・ディフェンダーズによると、中国共産党は2021年4月以降に海外市民の監視を強化しており、これまでに23万人の中国人を「説得」し本国へ帰還させたという。反体制運動の支持者が多く含まれるとみられる。

米紙は「世界100拠点以上」と報じる

中国が秘密裏に運営する警察署は、世界各地に存在する。フォックス・ニュースはその多くがヨーロッパに位置し、ロンドン、アムステルダム、プラハ、ブダペスト、アテネ、パリ、マドリード、フランクフルトなどに点在していると報じている。北米ではニューヨークの1拠点に加え、トロントに3拠点が設けられている。

カナダ民放最大手のCTVは、同国に設けられた3拠点を実際に訪れている。1カ所目は平凡な事業所に紛れる形で、2カ所目は閑静な住宅街にある家の一角に、そして3カ所目は既存のコンビニの住所を借りる形で存在していることが確認された。いずれも東岸の大都市・トロント大都市圏に位置する。

ほかの国においても、既存の商店に身を隠すようにして設営されているようだ。英スコットランドのヘラルド紙は、スコットランドのグラスゴーにある有名ショッピング街に位置する人気中華料理店の住所が、秘密に設けられた警察署のものと一致したと報じている。中華料理店の一角が、中国政府とつながる捜査組織の拠点となっていた。

少なくとも世界じゅうに54拠点という報道があるなか、米ニューヨーク・ポスト紙は世界100拠点以上とも報じており、中国警察網の規模は想像以上に広大なようだ。

セーフガード・ディフェンダーズが公開した報告書によると、詳しい所在地は明かされていないものの、東京にも1拠点が存在する模様だ。

ニューヨーク・ポスト紙はまた、中国政府が各国の政府や自治体関係者らとのパイプを築いていると指摘している。

ニューヨークのラーメン店2階に構えた警察の事例を前掲したが、このビルの3階に入居し福建省長楽市と関係が深いとみられるアメリカ長楽協会は、ニューヨーク市のエリック・アダムス市長を招いた豪華な晩餐ばんさん会を開催している。同協会には中国市民を監視している疑いが掛けられており、また、米国税庁によってブラックリストに登録されている。

ニューヨークのチャイナタウン
写真=iStock.com/Peeter Viisimaa
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狙いは香港人、ウイグル人、反体制派…

米国議会が出資する報道機関のラジオ・フリー・アジアは、セーフガード・ディフェンダーズによる報告書を取り上げ、「報告書によるとこうした警察署は、中国の2つの省の公安局が海外で運営しているものである。本国の家族に圧力をかけるなどを通じ、市民に中国への帰還を説得する目的で利用されている」と報じている。