通い介護とビジネスケアマネ

父親が亡くなった後、すぐに母親の介護認定を受け直したが、結果が出るまでみなしでサービスを受けることに。石黒さんは、週3回ヘルパーを頼み、その他にデイサービスを1〜2日。訪問看護を1日。土日は石黒さん夫婦が高速道路を使って片道2時間かけて実家に通い、母親を介護した。

「ヘルパーさんを中心とした在宅介護ですが、私は、平日は仕事をし、土日は入浴、排泄など対応。食事の支度や話し相手は妻がしてくれますが、ゴミ出し、洗濯、合間を見て、食材や必要なものの買い出しもします。21時には寝かせますが、オムツ交換を0時、3時、6時にして、その他にも眠れないと母は大声を出すので、なかなかまとめて眠れませんでした」

平日の仕事で疲れていたにもかかわらず、夜中は3時間おきにオムツ替え。さらに、「お願いだから、オムツ替えてよ~」などと何度も起こされた時は、さすがに石黒さんも、「このままでは私の体力が持たない」と思い、「パットは、2〜3回おしっこしても、漏れないようになっているんだから、3時間は我慢してください。俺は、仕事してからここに来ているんだから、少しは寝かせなさい」と言わずにはいられなかった。

あふれるオムツ入れ
写真=iStock.com/Nelly Senko
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そして、介護が必要な親の側にいられない子どもにとって、頼りにしているのがケアマネジャーやヘルパーだ。しかし石黒さんの母親の担当になったケアマネとヘルパーは、最初から不信感が漂う人たちだった。

ケアマネAさんは、石黒さんが福祉業界で働いていることを知ると、あからさまに面倒くさそうな態度をした。それだけでなく、「独居でお過ごしですと、『ヘルパーにお金を取られた!』みたいなトラブルが発生することがありますけど、『タンス預金みたいなことをしている方が悪い』と警察も言っていますよ」と平気で発言。

さらに、郵便受けの鍵を、「南京錠タイプから、ナンバータイプの鍵に替えて、ナンバーを教えてもらえれば、郵便物の管理・手続きもわれわれでできますよ」と言う。

そして極め付きが、母親に対して何度も、「ついでに、『あれやって、これやって』というのは、やめてくださいね」というセリフを吐くことだった。石黒さんは、個人情報の問題があるので郵便受けの鍵の件は断り、実家に大金を置かないことを徹底。「利用者に寄り添えない“ビジネスケアマネ”だな」とため息をついた。