「自信」と「慢心」の境目を大人がしっかりと見極める

元メジャーリーガーの松井秀喜氏は高校時代の恩師から読書を勧められたという。また東海大仰星高校ラグビー部の湯浅大智監督は、勉強をして本を読み、映画も見て見聞を広めろと指導している。選手としてだけでなく人間としての成長をも促す大人が周りにいれば、「全能感」を内面化せずとも済む。

しかしながら競技力だけを高める、つまり勝利だけに固執する大人に囲まれた子供は「全能感」を追わざるを得なくなる。それを求めて脱落する、あるいはいざ手に入れても「スポーツバカ」になる。どちらにしても不幸な結末にたどり着くこの隘路あいろは、指導者や親などの子供を取り巻く大人たちは理解しておかなければならない。

どこまでが自信でどこからが慢心か。それがやがて「全能感」へと肥大化するのはどこからか。その境界を見定めることは容易ではない。だからといって諦めてはならない。見極めようとする姿勢を手放さずにじっくり観察するなかで「見極める目」を身に付けるしかない。

差し当たっていまの私たちにできることは、子供が行うスポーツを大人が行うプロスポーツと同じように捉えないことだろう。子供が行うスポーツでは勝敗が自我の形成に深く関わること、勝利が人を狂わせる麻薬にもなりうることを自覚して、節度を保っての指導や応援を心がける。せめて勝敗に一喜一憂しないでおくことくらいはすぐにでもできるはずだ。

個々人によるこうした心がけが、ひいてはスポーツ界全体の健全化につながる。そう私は考えている。時間はかかるかもしれない。それでもやるしかない。

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