事業者側は「亡霊」を恐れている

――日本では「お客さまは神様です」という言葉が曲解され、中には「お金を払う人がえらい」という態度の人も見かけます。CRISP SALAD WORKSの接客にはこれまで反発などはなかったのでしょうか。

「なれなれしい」などの意見をメールでいただいたこともありますが、それらはみな単発のもので、経営課題として取り組まなければならないほどの反発はほとんどありません。むしろ、好意的な声を多くいただいています。

お客さまの意見を分析する際に重要なのは、それをどんな人が言っているのか、ということです。たとえばクレームがあったとして、それを言っているのが初めて来た人、そんなに来店がない人なのか、あるいは今まで100回以上来てくれた人なのかで、対応は変わりますよね。

これまでは声の大きな人、いろいろ言う人の意見が比較的通りやすい傾向がありました。その1人のために9999人が不満を抱えなければいけないのはおかしいと思います。特に飲食店の場合、ユニークユーザーの識別がほとんど進んでいないところがありましたが、クリスプではそこをロジカルに分析できる基盤があるので、わずかな声でブレるようなことはありません。

それに、そういう意見を言ってくる人はそれほど多くはないんですよね。特に飲食業の場合、そうした「亡霊」と言ってもいいような意見を恐れすぎていると感じています。

宮野浩史社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
宮野浩史社長

価格以上のプレミアムを求めるべきではない

――お客と店舗の関係で言えば、日本の接客は顧客に対してへりくだる風潮があるようにも感じます。

個人的には、日本もずいぶん変わってきていると思います。特に若いお客さまほど「お客さまは神様です」なんて思っていないのではないでしょうか。そもそも、ものを売り買いする立場に上も下もないんですよ。売りたい人がいて、それを欲しい人がいて、お金で交換するだけ。もちろん、そこで特別な接客をすること自体がサービスになることもあるわけですが、それは高級なブランドやホテルなんかがやっているだけの話で、お金を支払う側もそれに見合った対価を支払っています。

売り手と買い手はあくまでも対等であり、商品価格以上のプレミアムを欲しがってはいけない、というだけのシンプルな話なんです。

従来の日本的と言われる接客そのものを否定するつもりはないのですが、やはり日本では事業者側に、過剰なサービスを提供することでクレームを避けようとするといった考えを持っているところがあるように感じます。先ほど「亡霊」という言葉を使いましたが、そこはもう少し考えを改めていってもいいのではないでしょうか。