接客コンセプトは「親友のお母さんと話している感じ」

――具体的にはどんな文言を使っているのですか。

新たにアプリをインストールしてくれたお客様に注文方法を説明するときには「自宅でもオフィスでも思いついた時にいつでもスマホからあなただけのサラダを自由自在に注文できちゃいます」、注文されたサラダを調理中の時には「おいしくなーれ。あなたが注文してくれたサラダを心をこめて調理しています!」としています。

それは実際の接客でも同じで、例えば店頭で一つサラダが欠品した時に「大変申し訳ございません」と言うのではなく「ごめんなさい」と言います。「ごめん」だと軽すぎますが、「申し訳ございません」だと壁があるので、その中間といった感じです。

自分好みのサラダをカスタムするための豊富なトッピング
写真提供=CRISP
自分好みのサラダをカスタムするための豊富なトッピング

実は、「親友のお母さん」という言葉自体は後付けです。お客さまとの関係性を非常に重視する中で、親し過ぎず画一的過ぎない、友達のお母さんとしゃべっているくらいの距離感がいいよね、ということで今のコンセプトに至りました。熱狂的なファンを作るためのコミュニケーションが店頭であって、それを言語化・デジタル化した結果、一つ明確な基準が生まれたという感じです。

実際、クリスプを利用するお客様のおよそ3割が、週に1回以上のペースでご来店されています。そのような頻度で利用される飲食店はほとんどないと思いますし、熱狂的なファンを作れているという手応えは非常に強く感じています。

優れた飲食店に必要な3つの要素

――「熱狂的なファン」を作るようなギリギリの接客を、19店舗で展開しているのは驚きです。なぜそこまで踏み込んだやり方を採っているのですか。

私は、優れた飲食店には3つの要素が必要だと思っています。それは「料理」「箱」「接客」です。

「料理」は文字通り提供する食事ですが、今はレシピを調べればいくらでもいいものが出てきますし、その中には世界的なシェフが公開しているようなものもあります。つまり、料理はおいしくて当たり前であり、前提なんですね。

「箱」は業態やブランドイメージ、店舗の雰囲気といったものなのですが、こちらもインターネットで調べればいくらでもオシャレなお店が検索できて、簡単にまねすることができます。つまり、「料理」と「箱」についてはテクノロジーの進化によって現在では差別化が非常に難しいということです。

そうしたことを考えると、差別化できるとしたら、やはり「人」の部分しかないと思うんです。実はこれは昔から飲食店では知らず知らずに意識されてきていたことなんです。

店内で笑顔を見せる宮野浩史社長
撮影=プレジデントオンライン編集部
店内で笑顔を見せる宮野浩史社長

たとえば地元の居酒屋さんに行った時、なじみの大将やママさんが「遅くまでお疲れさん、今日は大変だったみたいだね。最初の1杯はおごるからゆっくりしていってよ」みたいに接してくれたら、すごく居心地がいいし、また来たくなると思うんですよ。そういう食べ物や飲み物以外の部分が、飲食店ではすごく大きな要素になっていると思います。

今までは、そうした個人店特有のパーソナルな接客や体験は、チェーン店では体験できないと思われてきました。ですが、それもテクノロジーを活用することで可能だと思いますし、クリスプでは、その実現を目指したシステム構築を行っています。