年下のキャスター陣に「おもちゃ」にされる気分は…
番組でおなじみの淡々とした口調でさらりと語るだけに、かえってその決意の苛烈さがうかがえる。
しかしこうした真摯な職業人としての一面を秘めながら、ひとたびフリートークコーナーとなるとキャスターにやり込められっぱなしのとぼけた素顔を思わずさらけ出してしまうどころか、〈もっと強いのをっ〉と嬉々として受け入れているフシさえあるところが「ウェザーニュースLiVE」のファンにはたまらないのかもしれない。
ただいくら視聴者にウケているとはいえ、コンビを組むキャスター陣にテレビカメラの前で入れ代わり立ち代わりおもちゃにされて、何も思うところはないのだろうか。
「全然です。腹なんか立ちません。昔からいわゆる“いじられる”タイプでしたし、キャスターの皆さんは下手したら娘ほどの歳の人たちなので、そういう役回りの方がむしろ自分には合ってる気がします。地震や台風の時はお互いプロなんだから、必要なことを真剣に伝えるのが絶対なんですけど、日本全国が高気圧に覆われてどこもだいたい晴れみたいな日に、楽しくやるのはありだと思うんですよ。他局の気象コーナーだったらすごいクレームになるんでしょうが、そのへんうちは自由なので」
気象番組を通じて伝えたいこと
YouTubeに上げられるような情けないやり取りになってしまいがちなのは、別に笑わそうと思ってやっているわけでも、演技しているわけでもない。
「演技できる余裕があったら、もっとかっこいいこと言ってますよ(笑)。でもできっこないので、どういう受け取られ方をしようが素直に正直に答えるようにしているだけで。オジサンが自然体でやっているのをもし皆さんに楽しんでいただけているのなら、望外の喜びでございます」
と同時に、柔らかで自由な雰囲気の気象番組を通じて伝えたいことがあるという。
「気象や地震に興味を持ってくれる人を増やせたらいいですね。文系学部出身者でも気象会社の解説員としてわいわい好き勝手やれてるんだってところを感じてもらって、裾野を広げる役に立てれば。もし5年後、10年後に『この番組がきっかけで気象の世界に飛び込みました』とか、『山口さんが自作の地震計を紹介した回を見て、地震学者になりました』なんて言われたりしたら、こんなにうれしいことはありません」
気象・地象に無償の愛を注ぐ者には、天の神様がご褒美をくれることもあるかもしれない。「ウェザーニュースLiVE」の若い視聴者の中から第二、第三の“ぐっさん”が生まれる日を、山口氏は心待ちにしている。