⑤ 仕事以外にやりたいことがない。
案外よくあるのが、このパターンだ。40年あまり、会社に尽くしてきて、トップに上り詰める人は基本、ワーカホリック、仕事一筋だ。趣味はゴルフぐらい。時間ができたとしても、何か打ち込みたいという趣味もなく、そもそも家族を顧みる時間などなかったので、疎まれていたりもする。楽しいリタイアメントライフの絵がなかなか描けないのだ。華麗にリタイアし、セカンドライフをエンジョイしているロールモデルも少なく、退職後の人生に希望を持てない人もいるだろう。
こうした複層的な理由が絡み合い、「辞めたくないオジサン」が生まれてしまう。
悩ましいのは彼らが高齢だから、能力が低いと必ずしも断言できないことだ。しかし、世界は秒速で状況が変化し、高いITスキルが求められる時代に、「昭和の成功体験」を語り、自らのやり方を結果的に押し付ける経営者が率いる企業に機動性を求めるのは難しい。
実際、社長の高齢化と業績悪化の関連性はデータでも如実に表れている。東京商工リサーチによれば、直近決算で減収企業の社長は60代が48.8%、70代以上も48.1%を占めた。高齢社長に業績不振が多い理由として、「長期的なビジョンを描けず、設備投資や経営改善が遅れる」と分析している。
これは海外でも同じ傾向だ。アメリカのabcニュースによれば、S&P500企業のうち、47歳以下のCEO23人の株価の19カ月間の平均下落率が2.8%に対し、72歳以上のCEOを擁する6社は、平均21%下落している。「高齢のCEOの中に勝ち組はほとんどいない」というのが、残酷な真実のようだ。
このままでは、多くの企業があの世へ道連れにされかねない。
年功序列に変わる新たな経営の形の模索や世代交代の促進とともに、長年培ってきたシニア経営者の知見を全く別の分野で活用し、活躍してもらう仕組み作り、さらに、新たなロールモデルの創出をすることが、沈みかけている日本の地位を復活させる鍵なのではないだろうか。