なぜ、日本企業のトップは権力の座にしがみつくのか。日本の社長の平均年齢は、2009年は59.5歳だったが、2021年は62.77歳。世界的に見ても高齢化が突出し、老害を指摘する声も多い。コミュニケーション戦略研究家の岡本純子さんは「ある程度の地位と名誉と金銭を得たのだから、傍目にはとっとと楽しいセカンドライフを送ればいいのにと思いますが、彼らが何歳になっても辞められない5つ理由がある」という――。
不機嫌なシニア男性
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オジ(イ)サン社長がその地位に恋々としがみつく理由

日本企業の社長の高齢化が進んだことで、最近ますます経営者の老害化の話が耳に入るようになった。

権力の座に居座り、一向に後進に道を譲ろうとはしない。そのため世代交代は起こらず、組織が硬直化、企業はどんどんと時代に取り残され、世界の中での“日本”の存在感もどんどん薄れていく……。

なぜ、大きな組織のトップに就いたオジ(イ)サンたちはその地位に恋々としがみつくのだろうか。その複合的な理由と深刻な弊害に迫ってみよう。

かつてはカリスマ経営者としてたたえられた日本電産の永守重信会長。その話は明快で面白く、人を惹きつける強烈なエネルギーを発していた。しかし、最近は齢78にして、次々とその後継とされる人の首を切り、幹部が大量離職、株価は急落するなど、社内は混乱を極めている、と報じられている。

筆者がかつて勤務した読売新聞の渡邉恒雄氏も96歳ながら代表取締役主筆として、今も君臨している。フジサンケイグループ代表の日枝久氏も御年84歳だが、いまだ権勢をふるっていると聞く。

もちろんこれまでの功績が否定されるわけでもなく、高齢でも会社組織を改革し前進させる人も少なくない。しかし、トップが権力に執着し、ある種の「恐怖政治」を行うと、結果的に上の言うことに唯々諾々と従う「コバンザメ」のような幹部が増殖することになる。新陳代謝は起きず、風通しが悪くなる。イノベーションは起こるべくもなく、組織はやがて壊死する。そうした事例は日本企業には掃いて捨てるほどある。

東京商工リサーチの調べによると、2021年の社長の平均年齢は、調査を開始した2009年以降、最高の62.77歳(前年62.49歳)だった。調査を開始した2009年の59.5歳から毎年、上昇を続け、社長の高齢化傾向が鮮明となっている。