自転車側が加害者になるケースにも注意したい。自転車と歩行者の事故は年間2760件発生し、うち5件が死亡事故(警察庁交通局『平成22年年中の交通事故の発生状況』)。相手が死亡すれば数千万単位の損害賠償もありうるし、違反していいずれにしても自転車の運転違反が横行する現状は望ましくない。ただ、運転者のモラルに訴えればいいという単純な問題ではなさそうだ。古川弁護士は、「細かくてわかりにくい交通ルールも違反横行の一因。そろそろ原則に戻すべき」と主張する。「自転車の歩道通行は、モータリゼーションの発達にともなう交通事故増加を受け、1970年の道交法改正で例外的に認められたルールです。ところがその後、原則に戻すどころか、逆に自転車を車道から締め出す方向で改正が重ねられてきた。こうしたわかりにくさが、ルール違反につながっている」

ただ、子供を乗せて走る主婦など自宅周辺の足として自転車を使う層を考えると、車道に戻すのは危険だという声もある。「もちろん自転車道や自転車レーンの整備は必須。またヨーロッパのように都心では自動車を制限するといった工夫も大切です。車が増加する一途だった時代とは状況が異なるのだから、そろそろ車中心の社会を前提としない交通ルールを考える時期にきているのではないでしょうか」(古川弁護士)れば過失割合も大きくなる。分離走行を示す標識。自転車走行部分も歩道であり、自転車は歩行者優先で徐行が必要。このように自転車が歩道を走ると、歩行者との事故だけでなく、交差点での自動車との事故も増えるとの指摘がある。

(PANA=写真)