自転車通勤する人が増えている。渋滞を横目に車道を駆け抜ける姿は格好いいが、車と接触しそうな場面に遭遇してハラハラすることもある。かといって歩道を走れば歩行者との事故につながりかねない。そもそも自転車は車道と歩道のどちらを走るべきなのか。

分離走行を示す標識。自転車走行部分も歩道であり、自転車は歩行者優先で徐行が必要。このように自転車が歩道を走ると、歩行者との事故だけでなく、交差点での自動車との事故も増えるとの指摘がある。(PANA=写真)

分離走行を示す標識。自転車走行部分も歩道であり、自転車は歩行者優先で徐行が必要。このように自転車が歩道を走ると、歩行者との事故だけでなく、交差点での自動車との事故も増えるとの指摘がある。(PANA=写真)

  道路交通法上、自転車は軽車両として位置づけられている。つまり自転車は車両の一種であり、車道と歩道の区別がある道では原則的に車道を走らなくてはいけない。

ただ、例外もある。道路標識で自転車通行を認めていたり、運転者が児童や幼児、高齢者、身体が不自由な人である場合は、自転車で歩道を通行できる。また工事中で車道の通行が危険な場合など、車道や交通の状況からやむをえないときも歩道の通行は可能だ(いずれも道交法第63条の4)。しかし、その場合でも歩道の中央から車道寄りを徐行(時速5.6キロメートル)する必要があり、かつ歩行者が優先だ。

このように自転車が歩道を通行できる条件は厳密に定められているが、それを意識せず、歩道を走っている人が少なくない。警察官ですら守っていないのが現状だ。自らも自転車通勤する古川美弁護士は、次のような光景をよく目にするという。「車道の信号が赤だと、車道を走る自転車は停止する必要があります。ただ、停止線の手前から自転車通行可の歩道にのぼれば、法律上は歩行者と同じように直進できる。そこで気持ちだけ歩行者になってしまうのか、そのまま赤信号を無視して車道を走ったり、逆に歩道に上ったのに車道感覚のままスピードを出して走る自転車が後を絶たない。非常に残念です」

  このような乗り方は道交法違反で、罰則も定められている。信号無視は3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金。歩道を歩行者が通行しているのに徐行せずに走れば2万円以下の罰金または科料だ。実際に罰則が適用されるケースは少ないが、だからといってルール無視はいけない。古川弁護士は次のようなケースも教えてくれた。「自転車で歩道を走る場合は双方向通行が可能。しかし、車道に下りれば他の車両と同じく左側通行しなければいけません。にもかかわらず車道の右側を逆走する自転車もいる。これは違反であると同時に、重大事故につながる危険な行為。命が惜しければやめたほうがいい」