「新型iPhoneの順番待ち」とは根本的に違う

わかりやすいのが、1968年に起きたカネミ油症事件だ。ライスオイル(米ぬか油)の中に混入した有害物質が引き起こした国内最大の食品公害で、現在も症状が続いて苦しんでいる人もいる。その事件を起こした企業に「市民団体」が、1970年から2012年まで42年に及んで「座り込み抗議」を続けていた。最後の日はこんな風に報じられた。

《座り込み抗議、42年に幕 「問題終わりではない」カネミ油症事件》(朝日新聞西部版 2012年3月22日)

このように聞くと、新型iPhoneを買うために3日前から寝袋持参で並んでいるような人たちが、企業の正門前で42年暮らしているような様子をイメージするかもしれないが、そうではない。実際に座り込みをしていたのは月1回ペースで、毎月第4土曜日の朝7時から午後7時までの12時間だ。

つまり、社会運動の世界では、例え月1ペースの座り込みであっても、それが途切れることなく続いていれば「42年、座り込み抗議を続けた」と言えてしまうカルチャーがあるのだ。同じことを辺野古の抗議に置き換えれば、「20分程度の座り込みを1日3回」であったとしても、それが継続できていれば、「抗議不屈3011日」になるというわけだ。

グレタさんの座り込み抗議は毎週金曜日

これは何も日本特有の抗議スタイルではない。例えば、世界の抗議界で今やスター的な存在となった、グレタ・トゥーンベリさんを一躍有名にしたのは、15歳の時にたった一人で始めた、ストックホルムの国会議事堂前での「座り込み抗議」だった。

「気候のための学校ストライキ」を行うグレタ・トゥーンベリ(写真=CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
「気候のための学校ストライキ」と書かれたプラカードを掲げたグレタ・トゥーンベリさん(写真=CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

「SKOLSTREJK FÖR KLIMATET」(気候のための学校ストライキ)と書かれたプラカードを掲げたグレタさんの「座り込み抗議」は1年で爆発的な広がりを見せて、同世代の子どもたちだけではなく大人まで多くの人が集うようになった。

……という話を聞くと、「へえ、あの女の子、1年間も学校を休んで国会前に座り込んでいたのか、なかなか根性あるじゃないか」と誤解する人も多いだろうが、キャンプ・シュワブのゲート前と同じく“パートタイム型の座り込み”なのだ。

グレタさんは毎週金曜日だけ学校を休んで、現地で座り込んでいた。時間がくれば家に帰るし、他の日は普通に学校に通っていた。