「黒田バズーカ」で株価は急上昇
総裁の黒田はアベノミクスを実行し、4月には従来とは異なる規模の異次元金融緩和を始めます。インフレ目標を2%に定め、達成まで金融緩和を続けると宣言しました。
安倍が金融政策見直しを掲げた時に上がり始めた株価は、さらに垂直上昇します。株価は景気の先行指標です。黒田日銀による金融緩和は、景気を一気に持ち上げた威力から「黒田バズーカ」と呼ばれました。アベノミクスが本格的に始動します。
第2次安倍内閣は、デフレ脱却と日米関係強化が当初の柱です。デフレ脱却ではアベノミクスの「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」という三つの政策を掲げ、日米関係強化としては地球儀外交、TPP交渉参加、安全保障関連法案など、安倍がやりたいことは色々ありました。
不安だったのは、官僚機構の動きです。民主党政権下で官僚機構のルーティンに異常をきたした全省庁が、その間に止まっていたことを一気に再開しようとします。政策の優先順位では政権の掲げるアベノミクスが最優先なのですが、政官ともに、みんなが自分のやってほしいことを最優先でやりたがる状況になっていきました。
その間に進んでいたのは、安全保障関係の政策です。平成25(2013)年の年末までに、秋の臨時国会での法案提出も含め手をつけたのは、特定秘密保護法、国家安全保障局設置、海賊多発海域における日本船への民間武装警備員常駐などです。
参院選で快勝、整う政権基盤
アベノミクス関連の重要法案では、国家戦略特別区域法が臨時国会で成立しています。臨時国会を閉じた直後の12月17日には、防衛計画大綱を閣議決定し、陸上自衛隊の水陸機動団の編制を決めました。いわゆる「日本版海兵隊」です。
翌年からアメリカ海兵隊との共同訓練が始まります。自衛隊は年間の実弾射撃訓練が他国に比べて極めて少ないことで知られますが、これでほんの少し増えたとか。
こうした間にも景気はどんどん上を向きます。株価はさらに上昇を続け、失業率が毎月のように改善していきました。6月23日の東京都議選は、自民党が20議席を増やす快勝です。ほんの4年前は自民党というだけで落選したのに、選挙運動もそこそこで勝てるほど超余裕の勝利です。
安倍は、この勢いで7月21日の参院選でも快勝します。自公連立与党が参議院で過半数を押さえました。ここまで勝って初めて、安倍の政権運営の基盤がようやく整います。
参院選後の8月8日、安倍は前代未聞の内閣法制局長官人事をやってのけました。内閣法制局長官は、戦後、法務・財務・経産・旧内務の4省出身者だけが就けるポストで、法制次長からの昇格が慣例です。安倍は、そこに駐仏大使の小松一郎を据えたのです。集団的自衛権の憲法解釈変更に着手するためです。