こういう連中を「中国のスパイだ」と言うと、真面目な場では怒られてしまうのですが、財務省にしろ、日銀にしろ、本当に中国のスパイかどうかは分からなくても、スパイと同じように他国の利益に適う行動をしていることに変わりはありません。少なくとも白川は、平成21年に上海で開催された中国人民銀行の会議で講演し、バブル経済崩壊後の金融政策について次のように話しています。
「今回の危機では、急速な景気の落ち込みにもかかわらず、エコノミスト達からは、同様の大胆な政策提案は行われていませんし、そうした急進的な措置も実施されていません。」(中国人民銀行・国際決済銀行共催コンファランス(上海)における日本銀行総裁・白川方明氏の講演「非伝統的な金融政策 中央銀行の挑戦と学習」2009年8月8日)
要するに、「金融緩和を阻止しています」との意味です。そのような講演をした張本人が、実際に日本が経済で中国に抜かれる政策をやってきたのですから、これがスパイでなければ相当なバカです。日本経済を復活させようとの看板のもと、安倍が金融に目をつけたのは、実に正しいことだったと言えるでしょう。当時の日銀は、日本の癌でした。
一時の夢だったアベノミクス
平成25年3月15日、日銀正副総裁人事が国会で承認され、3月20日に黒田東彦が新総裁に就任します。安倍が前総裁の白川方明の辞表を取り上げてからおよそ1カ月、安倍は日銀人事を乗り切りました。
総裁候補として名前の挙がっていた岩田規久男は、副総裁に就任します。安倍は、あくまでもリフレ派で正副総裁を固めたかったのです。
もう一人の副総裁には、日銀出身の中曽宏が入ります。ここで日銀出身者を入れようというのは、麻生の意見です。総裁が財務省(大蔵省)出身、副総裁の一人は学者出身だから、もう一人は日銀から入れないと士気が下がるという理屈です。中曽は、今のところは人畜無害な人です。黒田の異次元緩和も支持していましたが、黒田が退任した後、日銀出身者が総裁となった時にどう振る舞うかは分かりません。
中曽を入れたことは、安倍が日銀人事で勝ちはしたものの勝ちきれなかったということです。かつて高度経済成長を導いた当時の池田勇人首相は、中央銀行を政府から独立させる日銀法改正や、政府の経済政策に反する利上げを初動の段階で叩きのめしたからこそ、日本を経済大国に押し上げることができたのですが。
岩田の「デフレ脱却の数字的目標をインフレ率で設定し、達成するまで金融緩和をしてお札を市場に流せば、お札は希少品ではなくなり人々が汗水流して働いた結晶である商品の価値が上がるのでデフレは脱却できる」とする理論を中核とするリフレ政策は、「アベノミクス」と呼ばれるようになります。