「仕組み債」の販売をやめるケースが増えている

最近、“仕組み債”と呼ばれる複雑な金融商品の取り扱いを停止、あるいは縮小する金融機関が増えている。その背景には、仕組み債を購入した個人投資家が想定外の損失をこうむり、販売した金融機関とトラブルになるケースが増えていることがあるようだ。

複数のモニタに下落するチャートが表示されていて、女性は手で顔を覆って俯いている
写真=iStock.com/SunnyVMD
※写真はイメージです

個人的見解を述べさせていただくと、仕組み債は個人投資家には分かりにくいリスクが潜んでいるケースもあり、一般の個人投資家はあまり手を出さないほうがよい。

仕組み債は債券の一種だが、派生商品を組み入れた高リスク商品として認識すべきだ。そのリスク・リターンのプロファイル(特性)は通常の国債や社債と大きく異なる。仕組み債のリスクとリターンが理論的にどの程度か、金融機関でディーリングやポートフォリオ・マネジメントを行うプロでも理解することは難しい。

ここでいう難しいとは、いつ、何によって、仕組み債の価格がどう変化するかをあらかじめ想定し、将来のキャッシュフローを予想することが困難であることだ。金融市場の不安定感が一段と高まる状況下、仕組み債保有のリスクはこれまで想定されてきた以上に高まっていると考えられる。

プロでも運用が難しい「仕組み債」とは

仕組み債は、機関投資家がより高い利回りを手に入れるために開発されたリスクの高い金融商品だ。うまくいけば相応の利得を手にすることはできるかもしれない。反対に、想定と異なる結果が起きると、予想を上回る損失に直面する恐れがある。個人の資金運用の目的は、無理なく、長期の視点で資金を運用して生活の安心感を高めることだ。個人の資金運用に仕組み債は必要ない。

仕組み債の目的は、一定の期間にわたって資金を運用し、高い利得を目指すことにある。個人の投資家と異なり、機関投資家は達成しなければならない利得の水準が決められている。1年間でTOPIXを3ポイント上回る収益を目指す、あるいは今ある100万円を1年間で110万円に増やす(年間の目標収益率は10%)という具合だ。

株価が上昇する状況であれば、目標達成の可能性は高まる。しかし、株価が下落すると目標とする利得を得ることは難しくなる。その場合、機関投資家のなかから、仕組み債を活用して目標の利得を達成しようとするものが出始める。そのため、仕組み債の説明資料などには、“相対的に高いリスクを負担することによって、投資家のニーズに合った資金の運用を目指すことが可能”との文言が記されることが多い。