家庭に問題があってもメンタルヘルス不調の時は離婚しない方が良い
さて、いずれの面談者にも、私は奥様の考えや行動を否定するなどご家庭での問題には口出しはできません。DVがあるような場合は、法的な相談先などを案内はします。しかし、一般的に、メンタルヘルス不調の状態にあるときは、離婚などの人生における大きな判断はなるべくしない方がいいと言われていますので、そのようなことに結びつくかもしれない家庭の問題に強く口を挟むことは避けます。
それよりも、まずは、実家や兄弟姉妹を頼るなど、その人にとっての安全基地を見つけることができないか、一緒に考えます。
AさんやBさんであれば、実家に帰ること、少し旅に出ること(家を離れること)、診察に奥様も連れて行き主治医から何か言葉をかけてもらうことなど、こういうことはできないかと質問や提案する形で、患者社員に気づきや行動の変化を促しました。また、このことを主治医は知っているのかについても確認します。ほとんどの場合、主治医や奥様を否定はしません。主治医も産業医も、同じスタンスの場合が多いです。
メンタルヘルス不調を家族にカミングアウトする方法
先にあげたAさんは、最後まで頑なに奥様に休職中であることを伝えることを拒みました。結局、休職期間を満了しても、復職できるまでは回復しておらず、自然退職となりました。
Bさんは、しばらく実家に帰ることにしました。実家で日中の外出や趣味の時間をもち、回復してから家に戻りました。長期出張に行っていると奥様は周囲に話しているようでした。その後無事に復職しましたが、しばらくして退職になったと私は人事から聞きました。
私は、パートナーやご家族にメンタル不調をカミングアウトできない人の場合は、「今日産業医に言われたんだけど……」と会話を始めて真実(メンタルヘルス不調であることや休職していること)をカミングアウトすることを促しています。これができた人の多くは、家の居心地が良くなり、より早く回復方向に向かいます。
しかし、いずれの場合も、それはできないとおっしゃる社員も中にはいます。最終的には、早く治ることを祈るしかないと、産業医の無力さを感じてしまいます。
あなたの安全基地はどこですか。自分の弱さを話せる人、弱った自分の回復を応援してくれる人はいますか。秋の夜長に考えていただけますと幸いです。