社会病理を解決する方法は確立していない
対立する二つの情報があったときに、自己決定をどのように行うべきかは、極めて難しい問題です。エコーチェンバーやフィルターバブルの中にいると偏った情報しか見ることができないため、命を守る情報すら自ら遠ざけている可能性があります。
このような場合は「自分できちんと調べればよい」というわけでもありません。果たして自分は十分に多様な情報に接触できているのかを判断することは困難です。また、逆に多様な情報に接触することによって、本来接触する必要のなかったフェイクニュースを信じてしまう可能性もあります。
この社会的病理を解決する方法はいまだ確立していないのです。
政治イデオロギーが趣味・嗜好にも影響を与える
2010年代にアメリカの社会学の論文誌に「なぜリベラルはラテを飲むのか」という面白い論文(※)が発表されました。
※:DellaPosta, D., Shi, Y., & Macy, M. (2015). Why do liberals drink lattes?. American Journal of Sociology, 120( 5 ), 1473-1511.
人間の性質として、人は同じ価値観を持っている人たちに影響されやすい傾向があるのですが、それによって政治的イデオロギーがまったく関係ない趣味・嗜向にも影響を与えているということを示した論文です。その例として、リベラルとラテの話が出ています。
リベラルな人たちの中にはラテが好きな人たちが一定数います。すると、リベラルコミュニティ界隈では皆がラテを飲んでいることになります。周りが皆そうしているのだから自分もラテを飲まなきゃいけないという気になります。
リベラル派の人たちの中では、「カウチに座ってポテチを食べながらダイエットコーラを飲むのが好き」とは言いづらい空気があります。それは保守派の人たちの典型的な姿だからです。リベラルな人は、おしゃれな西海岸のカフェでラテを飲まなくてはならなくなります。こういうことがどんどん積み重なっていくと、起きるのは「極化」です。