保守よりリベラルの方が「エコーチェンバー度」が高い
日本では、政治的イデオロギーによってどのような違いが表れているのでしょうか。
最近出版された論文(※)では、リベラル系のほうがエコーチェンバー度が高い傾向があることが示されています。
※:Yoshida, M., Sakaki, T., Kobayashi, T. et al. (2021). Japanese conservative messages propagateto moderate users better than their liberal counterparts on Twitter. Scientifi
この研究ではツイッター上のアカウントを、安倍元総理を支持するか支持しないかで、リベラル、保守、中間層に分けて分析しています。
安倍元総理に関するツイートがそれぞれのコミュニティでどの程度拡散しているかを分析すると、安倍批判のツイートを拡散している人の大半は、同様のツイートを10回以上拡散しているリベラルなアカウントであることが示されました。これはかなりコアの「反安倍政権」の人々です。一般に政治的なツイートを10回もするアカウントは、それほど多くありません。安倍元総理批判のツイートの約9割はそういう人たちが発信したツイートでした。
このようなアカウントが作っているコミュニティを分析して見てみると、これらのアカウントは主にお互いにフォローする関係にあることがわかりました。
すなわち、外部とのつながりが少ないコミュニティを形成し、リベラルはリベラル同士で関係性を作る割合が高くなっていたのです。すなわち、リベラルなアカウントが好む安倍元総理を批判するようなツイートは内部でのみ拡散している、エコーチェンバー現象が起きていることがわかったのです。
目に見えないものを想像するのは難しい
この傾向は2017年の衆議院選の時に既に見られました。
立憲民主党はこのとき設立されたのですが、立憲民主党のツイッター公式アカウントのフォロワー数が、自民党の公式アカウントのフォロワー数を超え、ネット上では立憲民主党の人気が高まったとも言われました。
ところが、公式アカウントから発信された情報がどのぐらいの規模で広まったかを分析すると、自民党の公式アカウントのほうが拡散する力が強かったことがわかりました。フォロワーの数は立憲民主党が多かったにもかかわらず、広がりは自民党が強かったのです。
詳細を調べてみると、立憲民主党の公式アカウントをフォローしていたアカウントは、先の論文の結果と同様に、仲間内でばかりフォローをしていました。一方、自民党のほうは、支持者以外のアカウントもフォローしている人が多かったので、結果として拡散力が強くなっていました。情報の拡散がエコーチェンバーの中で行われたのか、外で行われたのかの違いが表われたのです。
エコーチェンバーの中にいると、周りはみんな自分に賛成してくれるので、世界中の人が賛成してくれているような気がしてきます。私たちは、目に見えないものを想像するのは苦手です。実は自分たちが少数派だということには、なかなか気づきません。だから選挙の後に、「自分の周囲は皆、野党を応援しているのに、なぜ与党が勝つのか。これは不正選挙に違いない」と言い出す人が出てきたりします。
その人にとっては、それが真実になってしまいます。自分の周りには自分と同じ考えの人しかいなかったわけですから。しかし、その人には見えなかっただけで、世界には違う考えの人もたくさんいることに気づければ、その原因は不正選挙ではないところにあると考えることができるのではないでしょうか。