会話をしている際、「次に何を聞くべきかわからない」状態に陥った際にも、この流れを意識すれば次に聞くべきことがわかります。ぜひ、活用してください。
情報は多い方から少ない方に流れるのが自然
もう一つ、研修中、毎日のように行うロールプレイングを見て、わかったことがあります。「聞き上手」な人は、例外なく「教わり上手」ということです。たとえば、次の二つのあいづちを比べてみてください。どちらが「聞き上手」だと思いますか?
部下 「連休は渋谷でショッピングだったのですが、どこも人混みで大変でした」
上司 A「そうだよね」
上司 B「そうだったんだ」
いかがでしょうか。どちらが聞き上手だと感じたでしょうか?
正解は、B。「そうだったんだ」というあいづちのほうが、部下が話しやすいのです。
水が上から下に落ちるよう、会話も情報が多いほうから少ないほうに流れます。A「そうだよね」だと、上司も「そのことについて知っている立場」なので、上司と部下の情報量は同じになります。だから、部下はこれ以上話すことがなくなります。
一方、B「そうだったんだ」は、上司がそのことを知らない、つまり上司のほうが情報量が少なくなります。すると、部下から上司へ情報が流れる、つまりいろいろな話をするのが自然な流れとなる、というわけです。
その後のセリフを加えてみると、よりわかりやすくなります。比べてみましょう。
上司 A「そうだよね。連休はね」
上司 B「そうだったんだ。どんな感じだったの?」
こうなると一目瞭然。会話が続くのはBだということがおわかりでしょう。もちろん、Aの「そうだよね」がダメとは言いませんが、やはり相手が話しにくくなることは事実であり、注意が必要なのです。
ソクラテス以来の「会話のセオリー」
「教わる会話」でも、部下の話す量が大きく変わってきます。こんな感じです。
上司「そうだったんだ。どんな感じだったの?」
部下「そうなんですよ。以前は、ここまで人が多くはなかったのですが、店は大行列です。どこも入れませんでした。息子はダダをこねますし、大変でした」
いかがでしょう。このように想定外の情報を教えてくれても不思議ではありません。知らない立場に立ち、教わる聞き方をしたほうが、相手はいろいろと教えてくれるのです。
古代ギリシャの哲学者ソクラテスが残した示唆、「無知の知」をご存じでしょうか。「自分に“知識がない”ことを知る者は、それに気づかない者よりも賢い」。これが、「無知の知」の本意。優秀な上司ほど、「知っているつもり」にならないよう戒めなければならないことを痛感します。
まず、大事なのは教わる姿勢。その上で、ここからは、部下のほうからいろいろと教えてくれる聞き方のテクニックをご紹介します。