ウクライナ兵100万のうち、4分の3に当たる75万人は2400キロ以上に及ぶ前線と後方地域、国内各地の基地に分散している。

一方、第2次大戦ではナチス・ドイツとソ連・欧州連合軍が前線に1500万の兵力を集結させていた。「戦術」核兵器という概念が生まれたのは、これほどの兵士が戦場に集まっていた時代だ。

核兵器を擁護する人々の考えが間違っているのは、昔の戦場の状況を現代に当てはめている点にある。

ロシア軍がウクライナに送り込んだのはせいぜい11万人。ウクライナ侵攻を「戦後最大の戦争」などと不吉な言葉で表現するから、それなら核兵器を使う意味もあるという誤解が生じる。もちろん、プーチンがそんな妄想を抱いている可能性は否定できないが。

ロシア軍撤退の可能性はどうか。旧ソ連は1989年に、約10年に及ぶアフガニスタン戦争から撤退している。その前例に倣うことは可能だ。

今回の戦争では、ロシア軍は一貫して前進を続けているとされ、ウクライナは辛うじて持ちこたえているだけとみられてきた。

しかし、こうした見方はウクライナ側にとってプラスに働いた。手遅れになる前に武器と支援を送ってほしいという西側諸国への訴えに、切実さが増したからだ。

ロシア軍がキーウ周辺から撤退し、ドンバス地方での攻撃を再開して4カ月近くになるが、ウクライナに対して決定的な打撃を与えられずにいる。

セベロドネツクとリシチャンスクを占領したが、多大な人的犠牲を払った。ルハンスク(ルガンスク)州の大部分を掌握したが、その後は再び膠着状態に陥っている。地上部隊は徐々に前進しているが、ペースは遅く、戦死者があまりに多い。