大阪府高槻市で54歳の女性を自宅の風呂で溺死させ、保険金をだまし取ったとして殺人の疑いなどで逮捕された高井凛容疑者が、9月1日夜、警察の留置施設で自殺した。作家の岩井志麻子さんは「自殺するような人間とは思われていなかったので、意外だと受け止めた人が多かったのではないか。おそらく彼は、他人の命も自分の命も軽く感じていたのだろう」という――。
自殺するような人間とは見られていなかった
高井凛は最も自殺から遠い所にいる人だと、私は思い込んでいた。
もちろん自殺する人の性格も事情もさまざまだが、幾つかの共通項があるとは感じていた。私の中で多数派だったのは、自分で自分を責める人、だった。
養母殺害の容疑で逮捕された凛が、留置場で首を吊ったとの一報が流れたとき、狂言自殺に失敗したのでは、といった推測がネットで沸いた。やはり多くの人に、彼は自殺する人とは見られていなかったからだ。これが彼の自殺の真実だと断定できるものではないが、それくらい凛の自死は意外だった。
大阪の資産家女性が高額な保険契約をさせた凛と養子縁組し、半年も経たず不審死。多額の遺産を受け継いだ凛は翌年に逮捕されたが、永遠に黙秘したままとなった。
お坊ちゃんなのに欲深い男
彼は次々と、そういった私の固定観念や勝手な思い込みの多さを突き崩していった。
私は凛がまだ逮捕されず、「限りなく怪しい養子」でしかなかった頃から、うちの息子と同い年というのもあり、いろいろと気になっていた。
デート商法まがいで顧客を捕まえ、ほぼ詐欺で契約を結ばせ、クビになり資格を取り消され、養子縁組も彼が書類を偽造していたのが発覚。
高級外車やタワマンや有名店での豪遊、高級ブランドの服や持ち物、寄り添うギャル風美女をSNSで自慢した。
名門大学に付属中学から通った坊ちゃんで、高身長イケメン、アメフトで鳴らした文武両道の人がどうして、劣等感にまみれた極貧の出から体一つで這い上がってみせる、みたいなハングリーなマインドというかメンタリティだったのかも、謎だった。