「事業部制」が足かせになっている

長く外資系企業で過ごしていて、日本の経営に感じていたことがあります。

それは、日本企業はマーケティングとIT、人事の近代化が遅れているということです。

経理や法務もそうであるケースもありますが、いわゆる各領域を横断できる水平ファンクションの生産性が高まっていないのです。

背景にあるのは、いわゆる事業部制的な組織だと感じています。

パナソニックセンター風景豊洲
写真=iStock.com/oasis2me
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事業部制にはもちろん利点もたくさんあったと思います。だから、パナソニックでも歴史的に活用されてきた。

炊飯器や洗濯機を製造するときには、製品ごとに自己完結していたほうが効率のいい面もありました。そして全体として、ブランド広告などで企業イメージアップを図っていく。

これは事業部制のポジティブ面でもありますが、「自分たちの思い通りにやる」というスピリッツがどうしても強くなります。そうなると、なかなか横の連携ができなくなっていく。ほかの事業部とつながらなくなっていくのです。

これが行き過ぎると、事業部のリーダーに「自分のお城」のような感覚が生まれかねません。

事業部に属する人間はすべて自分のほうを向いて仕事をせよ、などという空気まで広がりかねない。業者の選定まですべてリーダー自身がやる、なんてことにもなっていく。

これでは、組織として、とても不健全です。

そしてリーダーが自分の事業部のことしか見なくなるとどうなるのかというと、部門横断的であるべき部署もバラバラになっていくのです。マーケティング、IT、人事が特にそうです。これでは、会社全体として仕事がスケールアップしませんし、効率も上がらない。経営の近代化も進みません。