「天安門事件」と画像投稿サイトの意外な関係性

9月1日、Twitterでなぜか「天安門事件」がトレンドワード入りした。『八九六四』という、同事件をテーマにした著書を持つ私としては、看過できない事態である。

念のため解説すれば、天安門事件とは1989年6月4日未明に中国の北京で発生した、人民解放軍による民主化デモの武力鎮圧事件だ。当時、軍は抵抗する群衆に大量の実弾を発砲し、戦車を突っ込ませるなどした。結果、デモとは無関係なのに流れ弾が命中した一般市民も含めて、おそらく数千人(数百人~数万人まで諸説あり)が犠牲になった。

毎年、事件が起きた6月4日前後にはテレビや新聞で特集が組まれる。だが、30数年前の出来事であるため、普段は多くの日本人が忘れており、そもそも事件を知らない人も多い。それがなぜ、記念日とも無関係な9月上旬に、SNS上でバズることになったのか。

理由は、近年のインターネット上で「天安門事件」という単語が、中国からの無断転載をブロックするための“魔法の呪文”として認知されている事と関係があった。

9月1日に投稿された、無断転載防止に「天安門事件」の活用を呼びかけるツイートの例。
ツイッターより
9月1日に投稿された、無断転載防止に「天安門事件」の活用を呼びかけるツイートの例

具体的には、画像投稿サイトpixivの内容を無断でコピーしている中国系と見られるサイト『vpixiv』に業を煮やしたpixivユーザーが、自分のプロフィール欄に「天安門事件」と書き込んでみたところ、それをミラーしたvpixiv側のアカウントが公開停止になる事態が続出、ついにサイトがダウンした(とされている)ことが発端らしい。

閉鎖の直接的な原因が本当に「天安門事件」だったのかは、Twitterの中国ネット事情に詳しい界隈でも諸説が入り乱れている。ただし一般論として、あるサイト内に中国国内で政治的なタブーに抵触する表現を書き入れることで、中国からのアクセスが難しくなったり、サイトを自動的にミラーした中国国内のサイトがBAN(削除)されやすくなったりすること自体は、おおむね確かな話である。