日本の高齢者は全体に“低体重”傾向にある

ここでちょっと、日本の高齢者がいかにやせているか、医学的データを元に状況をチェックしてみましょう。

太っているのか、やせているのかの基準となる指標にBMIがあります。これは身長(メートル)を2乗した数字で体重を割ると計算できます。一般的にはこのBMIが25を超えると「肥満」、18.5を下回ると「やせ」、中でも22が最も病気のリスクが低くなることから「標準体型」とされています。

全国の訪問看護を利用している高齢者のBMIを調査したところ、BMIが18.5もない「低体重」に該当する人が60%にも上ることが明らかになりました。中でもBMI16未満の「重度のやせ」の人が28%もいたのです。

女性の場合、BMIが16未満だと、BMI22の人に比べて死亡リスクが2.6倍にアップすることがわかっています。BMI18.5でもかなりやせ型ですが、BMI16となると、もう筋肉まで落ちてガリガリにやせた状態です。

私は、こうした日本の高齢者の低体重傾向を“危険なレベル”と考えています。

食事量が不足しているために、「低栄養→筋肉量低下→肺炎・骨折→入院→さらに筋量低下」という悪循環を自分から招き入れてしまっているのです。

「理想のBMI」は30〜59歳のデータに基づいている

低体重のリスクがピンとこない方もいるかもしれませんが、高齢者の場合、「やせていると死亡リスクが高く、太っていると死亡リスクが低くなる」ことが多くの研究で明らかになっています。アメリカで行なわれた研究でも、高齢者の死亡リスクはBMIが低くなるほど高まり、高齢者のBMIは27のちょい太めくらいが最も死亡リスクが低いとわかっています。

BMI27ということは、つまり肥満(1度)ということになるのですが、高齢者の場合、標準体型(BMI22)の人と比べて死亡リスクが29%低下することが報告されています。高齢者の場合、かなりの肥満であるBMI40の人でさえ、標準体型の人と死亡リスクがほぼ同じなのは驚きですね。

「あれ? BMIって22が最も健康にいいはずなのに、なんで?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。実は、理想のBMIは、若者と高齢者とでは別々に考えたほうがいいのです。

というのも、BMI22というのは、30歳から59歳の5000人を対象にした健診データから導き出された指数、つまり高齢者がまったくカウントされていないのです。言わば、「高齢者抜き」でつくられた体格指標であり、そのため「22がいちばんいい」というのは高齢者には当てはまらないと考えたほうがいいんですね。